研究課題
2013年度は、PKCδSVタンパク質の発現解析系を確立すべく、PKCδSVに特異的なアミノ酸配列をもつペプチドを用いて特異抗体の作成を試みた(下記①)。また、作成した4種類の自作抗体と市販のPKCδに対する2種類の抗体(PKCδのN末側認識する抗体とC末側を認識する抗体)を用いて、酸化ストレスを負荷した動物組織中におけるPKCδSV蛋白の発現変化を観察した(下記①)。更に水溶性ラジカル発生剤であるAAPH(2,2’-azobis(2-methylpropionamidine) dihydrochlorid)および脂溶性ラジカル発生剤であるAMVN(2,2’-azobis(2,4-dimethylcaleronite)による酸化ストレス傷害に対する防御作用についてPC12細胞を用いて検討した(下記②)。①PKCδ遺伝子から産生されるPKCδSVは、PKCδのwild typeとは異なるアミノ酸配列を有する。このPKCδSV特異的アミノ酸配列部の中から他の蛋白質との相同性を持たない2つの配列を選択し、ペプチドを合成した。このペプチドにKLHをコンジュゲーションしたものを用いてウサギに免役し抗体作成を行った。作成した抗体とPKCδのC末側およびN末側を認識する市販を用いて、酸化ストレスモデル動物組織(四塩化炭素投与マウス肝臓、虚血再灌流ラット脳)を用いて蛋白質の発現解析を施行した。その結果、自作したPKCδSV特異的抗体がPKCδSVを認識すること、また、酸化ストレス負荷によりPKCδSV蛋白質の発現が増加することが明らかとなった。②AAPHおよびAMVNにより酸化ストレスを負荷したところPC12細胞の生存率は有意に減少した。一方、アデノウイルスベクターを用いてPKCδSVを高発現にしたPC12細胞ではこれらのラジカル発生剤による細胞傷害が顕著に抑制されていた。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、新規の酸化ストレス防御分子と考えられるPKCδSVの役割を明らかにすることを目的としている。2012年度、2013年度の期間内に、酸化ストレスによるPKCδSVの発現誘導についてmRNAおよびタンパクレベルで明らかにすることができた。また、menadione、AAPH、AMVNなどのラジカル発生試薬により誘導され酸化ストレス傷害に対しPKCδSVが有効な防御因子となり得ることが明らかとなった。
酸化ストレスによるPKCδSVの発現誘導の分子機構について検討を行う。alternative splicingの制御による蛋白質発現制御に関する研究、特に酸化ストレスを介した誘導機構についての研究は殆どなされていない。今後、酸化ストレスによるalternative splicing制御の分子機構を中心に研究を進めていく予定である。
実験に用いる試薬の購入費用が当初の予定額より少なく済んだため。酸化ストレスによるalternative splicingに及ぼす作用を検討する。上記の差額はその費用にあてる予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Tokai J Exp Clin Med.
巻: 38 ページ: 146-158
巻: 38 ページ: 124-134
Pathol Int.
巻: 63 ページ: 339-344