研究課題/領域番号 |
24590464
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
竹腰 進 東海大学, 医学部, 准教授 (70216878)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロテインキナーゼC / 酸化ストレス / RNAスプライシング / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
本年度は、培養細胞系を用いてPKCδSVの機能の詳細な解析を試みた。プラスミドベクターを用いてPC12細胞にPKCδSVとGFPとの融合タンパク(PKCδSV-GFP)を髙発現する細胞を作成した。PKCδSV-GFPは、N末側にGFPを融合したもの(PKCδSV-GFP-N)とC末側に融合したもの(PKCδSV-GFP-C)の2種類を作成した。その結果、PKCδSV-GFPを髙発現させた細胞では細胞死が誘導されることが明らかとなった。アデノウイルスベクター系を用いてPKCδSVを発現させた実験系では酸化ストレスに対しPKCδSVが防御的に作用する結果が得られていたが、これは本年度得られた上記の結果と相反するものであった。プラスミドベクター系とアデノウイルスベクター系の両者のベクター系で産生されるPKCδSVの発現量を、昨年度作成したPKCδSVに対する抗体を用いてimmuno-blottingにより解析したところ、プラスミドベクター系ではPKCδSV蛋白質の発現がアデノウイルス系と比較して非常に高くなっていることが判明した。以上の結果から、PKCδSVは発現量の多寡により細胞に及ぼす作用が異なることが明らかとなった。PKCδSVではDAG結合部位がオープンの状態となっておりDAGとの結合活性が高いことが判っており、細胞生存に必要なcPKC、nPKCなどのDAG依存性PKCアイソフォームとDAGとの結合を競合阻害することでシグナル伝達を阻害していることが推察された。また、PKCδSVがGFPとの融合蛋白を形成することが毒性発現に重要である可能性が示唆されたため、現在、mycおよびHA tagをもつPKCδSV分子を発現誘導するベクターを作成して細胞傷害に及ぼす作用を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、新規の酸化ストレス防御分子と考えられるPKCδSVの役割を明らかにすることを目的としている。2012年度ー2014年度の期間内に、酸化ストレスによるPKCδSVの発現誘導についてmRNAおよびタンパクレベルで明らかにすることができた。また、adione、AAPH、AMVNなどのラジカル発生試薬により誘導され酸化ストレス傷害に対しPKCδSVが有効な防御因子となり得ることが明らかとなった。更にPKCδSVの発現量がある閾値以上になると、むしと細胞傷害性に作用することが判ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験結果から、PKCδSVがこれまで想定していなかった新しい役割を有することが判明した。PKCδSVの発現量が細胞生存に大きな影響を与えると推定される。今後、酸化ストレス下におけるPKCδSVの発現制御が酸化ストレス細胞傷害を考える際に非常に重要になることが示唆され、PKCδSVのalternative splicing制御の解析を進めるとともにPKCδSV発現量と細胞死との相関を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも順調に実験が進んだため、助成金の一部を次年度以降に残すことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞培養等の消耗品の購入にあてる予定である。
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