研究課題/領域番号 |
24590466
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
星野 真理(大村真理) 独立行政法人理化学研究所, 感染免疫応答研究チーム, 研究員 (10313511)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | IgE |
研究概要 |
E3ユビキチンリガーゼ、MARCH Iは、抗原提示関連分子、MHCクラスII, B7-2をユビキチン化することにより制御している。このMARCH Iの欠損(KO)マウスでは免疫開始に必要な樹状細胞の機能低下、およびアポトーシスによる樹状細胞数の減少が誘導されることが、これまでに明らかになっている。さらに、このように免疫機能の恒常性に必要なMARCH Iを欠損することによりアレルギー反応に重要なIgE産生性も著しく低下するデータを得ているが、MARCH Iのこの新たな免疫制御のシステムおよびそのメカニズムについて明らかにすることが本研究の目的である。 初年度は、まず、感染動物モデルを用い、MARCH I欠損(KO)マウスで観察されるIgE産生性の著名な低下の臨床病態への影響を明らかにするために、MARCH I KOマウス(バックグラウンド:Balb/c, C57BL/6)に住血吸虫を感染させ、寄生虫感染後のEPGの経時的変化、血清中IgE, Igサブタイプの変化、末梢血中の好中球などの免疫細胞の動態観察等から易感染性を検討した。 すると、Balb/c, C57BL/6のどちらのバックグラウンドにおいても、寄生虫感染後のEPGの経時的変化、末梢血中の好中球、B細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞数はMARCH I KOマウス、コントロール間でほとんど変化が見られなかった。また、総IgE産生量についてもMARCH I KOマウス、コントロール間で変化が見られなかった。このことから寄生虫感染時においてMARCH Iの欠損は影響を与えないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト疾患の診断、治療および予防への寄与という、MARCH Iが臨床病態といかに関連しているかという一番の重要問題事項の検討を、あえて初年度に持ってきた。残念ながら、今回行なった、IgE産生が感染防御に重要な役割を果たす寄生虫感染のマウスモデルの系においては、MARCH I欠損によるIgE産生の低下は影響を与えないことが明らかになったが、さらなるMARCH Iの臨床疾患との関連の検討事項として、他のIgE産生が関与する疾患、たとえば、食物アレルギーや花粉症へのMARCH I欠損による影響を調べることにより疾患への影響を検討する方向性は今後の課題として残されていると思っている。 それへの足場を固める基礎データの積み重ねを行なっていくことが、現在、検討予定である。
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今後の研究の推進方策 |
IgE産生低下のメカニズムの検討として、まず、IgE産生に重要な経路であるTh2経路における異常があるか? の検討を行なう。結果として(1)Th2反応のみが下がる場合と(2)全体の反応が下がるためにTh2反応も下がる場合がある。(1)の場合、なぜTh2反応のみがさがるのか、Th反応を起こす樹状細胞にTh2をさげる要因(ex.Th1反応を起こすサイトカインの量の増加)があるか、T細胞自身のTh2への向かいやすさがあるかをそれぞれの細胞を単離し、細胞を培養してサイトカイン産生量を測定する。(2)の場合、免疫を起こす樹状細胞、T細胞、B細胞のいずれの細胞の異常かを同定する。 また、どの細胞のMARCH Iが欠損していることによりIgE産生性が低下するのか?についての検討を行なうために、MARCH IコンディショナルKOマウス-CD11c creの作製を行なう。つまり、現在使用しているMARCH I KOマウスはコンベンショナルKOマウスであるため、すべての細胞でMARCH Iが欠損している。そのため、どの細胞のMARCH Iが欠損していることが原因でIgE産生性が低下しているか不明である。そこで、MARCH IコンディショナルKOマウスを用いることによりMARCH Iの発現が高く、MARCH Iの異常が見られている樹状細胞でMARCH Iを特異的に欠損させ、それが原因でIgE産生が低下するか、また、そのメカニズムを明らかにする。その際に使用する、樹状細胞で特異的に欠損できるCD11c-creマウスを用いて、実験に使用するMARCH IコンディショナルKOマウス-CD11c-creの作製のための掛け合わせを始める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、所属先の理化学研究所、免疫アレルギー科学総合研究センター、感染免疫応答研究チームの所属長が4/1付けで転出されたことによる研究室の引越しのため、実験が制限を受けたことにより、ならびに私自身の転出も次年度4/1付けで決まり、その移動のため、また、理研・センター自身も改廃・雇用止めおよび新センター発足のための増改築等により実験設備的な拘束を受けたため、実験の遅延をまねいた。 平成25年度は4/1付けでの他大学機関への転出のため、そこでの実験設備のセットアップなどに費用を要するが、研究を出来る限り早く始められるようにまずシステム作りをし、実験を開始し、消耗品、試薬の購入に使用する予定である。
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