研究実績の概要 |
E3ユビキチンリガーゼ、MARCH Iは、抗原提示関連分子(MHCクラスII, B7-2)をユビキチン化により制御し、MARCH I欠損マウスでは免疫開始に必要な樹状細胞の機能が低下していることを報告してきた。さらに、このように免疫機能の恒常性に必要なMARCH I欠損によりアレルギー反応に重要なIgE産生性も著しく低下するという実験データを得ているが、この新たな免疫制御系およびそのメカニズムの解析が本研究の目的である。 初年度は、感染動物モデルを用い、寄生虫易感染性を検討したが、MARCH I欠損マウスで観察される、IgE産生性の著明な低下は、寄生虫感染の際の免疫細胞の臨床病態に影響を与えないことが明らかとなった。平成25年度は、全身性免疫反応について解析を行ったところ、MARCH I欠損マウスの抗原特異的な抗体反応・T細胞反応は、対照群と比較して低く、特に抗原特異的なIgE反応が著しく低下していた。この結果は、MARCH Iが易感染性に関与する可能性を示唆し、MARCHI制御によるIgE制御によってアレルギー反応を操作・抑制できる可能性を秘めている。平成26年度には、MARCH I欠損による免疫機能低下に影響を与えている細胞種は、樹状細胞であることが明らかになった。この結果は、樹状細胞自身の抗原提示関連分子の過剰発現で自らおよび全体の免疫反応が制御されることを示し、一連の免疫反応の収束のメカニズムを示唆するものである。 最終年度は、これまで使用してきたコンベンショナル欠損マウスでは、二次的作用を見ている可能性があるため、コンディショナル欠損マウスを用いたところ、コンベンショナル欠損マウスの時と同様に、全般において免疫反応がやや落ちる傾向が見られたことから、IgE産生性低下を含む免疫反応の低下は、MARCH I遺伝子欠損による直接的な影響であることが明らかとなった。
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