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2012 年度 実施状況報告書

RNAアジュバントによる腫瘍浸潤免疫細胞の機能修飾

研究課題

研究課題/領域番号 24590470
研究種目

基盤研究(C)

研究機関北海道大学

研究代表者

志馬 寛明  北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70372133)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード癌免疫療法 / RNAアジュバント / MDSC / IPS-1 MAVS / NK細胞 / インターフェロン
研究概要

本研究では、RNAアジュバントが、癌の進展を促進する働きをもつ免疫抑制性のミエロイド系細胞の機能を変化させて抗癌作用を発揮する新規メカニズムの解明を目的としている。本年度は、RNAアジュバント刺激によるミエロイド由来サプレッサー細胞(myeloid-derived suppressor cells, MDSC)の機能変化についてNK細胞の活性化能を中心に解析した。
合成2本鎖RNAアナログであるpolyI:Cを投与した担癌マウスの腫瘍や脾臓からMDSCs(CD11bおよびGr1陽性)を単離し、各種遺伝子の発現解析を行った。その結果、アジュバント投与によってMDSCsから1型インターフェロン(IFN)が強く産生されることが分かった。1型IFNは、抗癌免疫応答の誘導に関与していることから、さらに詳細に調べたところ、NK細胞の活性化に関わる遺伝子群の発現と細胞表面でのNK細胞の活性化因子の発現が上昇することが分かった。PolyI:C投与後の担癌マウスからMDSCsを単離し、NK細胞と混合すると、NK細胞の活性化を示すCD69の発現上昇とIFN-γの産生が起こったが、細胞傷害活性には変化がなかった。NK細胞の活性化には、polyI:Cで活性化したMDSCsから産生される1型IFNが必要十分であったが、それ以外の機構も関与している可能性が示唆された。またこのMDSCsの活性化には、polyI:CによるIPS-1とIFNARシグナルの活性化が必須であった。以上の結果から、2本鎖RNAは、従来から知られている樹状細胞の活性化を介する経路に加えて、MDSCsの活性化により抗癌エフェクターNK細胞を誘導し、抗癌作用を発揮する可能性があると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度は、マイクロアレイによる遺伝子発現解析をメインとし、polyI:C刺激によって発現が変化する遺伝子の同定をもとに腫瘍随伴ミエロイド細胞の機能変化を明らかにする予定であった。しかし、個別の遺伝子に対する定量PCRを用いた発現解析により、2本鎖RNAの刺激がMDSCsにNK細胞の活性化に関わる遺伝子の発現誘導を引き起こすことを見出したので、その機能変化について先行して解析を進めた。In vivoでのMDSCs活性化シグナルの同定や、ex vivoでのNK細胞の活性化メカニズムに関して、主軸となるメカニズムは同定できたことから、当初の計画以上に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

前年度に引き続き、2本鎖RNAによるMDSCsの機能変化の詳細とNK細胞の活性化メカニズムについて解析する。In vivoでの腫瘍増殖抑制効果への寄与についても担癌マウスモデルを使用して解析する。今後さらに、腫瘍内に多く存在する腫瘍内マクロファージについても2本鎖RNAによる遺伝子発現の変化、表面マーカーの発現変化、NK細胞および細胞傷害性T細胞の活性化能等について検討する。MDSCsと同様にNK細胞の活性化能を示す場合は、ex vivo、in vivoでの活性化メカニズムを阻害抗体やノックアウトマウス等を用いてそのメカニズムを解明する。さらに、2本鎖RNAによる未知の機能変化を明らかにするために、マイクロアレイの使用は検討している。

次年度の研究費の使用計画

本年度は、マイクロアレイの使用を計画していたが、より安価な各種プライマーを用いた定量PCRによる解析で成果が得られたため、研究費の繰越が生じた。しかし、来年度は未知の機能の探索のためにマイクロアレイの使用を検討している。他にも消耗品として各種試薬、抗体、キットの購入とマウスの購入費、飼育費が必要となる。加えて、論文発表用の英文校閲費用、投稿費が必要となる。さらに学会での成果発表のための旅費を必要とする。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Toll-like receptor 3 signaling converts tumor-supporting myeloid cells to tumoricidal effectors.2012

    • 著者名/発表者名
      Shime H, Matsumoto M, Oshiumi H, Tanaka S, Nakane A, Iwakura Y, Tahara H, Inoue N, Seya T.
    • 雑誌名

      Proc Natl Acad Sci U S A.

      巻: 109 ページ: 2066-2071

    • DOI

      10.1073/pnas.1113099109

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TAMable tumor-associated macrophages in response to innate RNA sensing.2012

    • 著者名/発表者名
      Seya T, Shime H, Matsumoto M.
    • 雑誌名

      Oncoimmunol.

      巻: 1 ページ: 1000-1001

    • DOI

      10.4161/onci.19894

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TLR3/TICAM-1 signaling in RIP3 tumor necroptosis.2012

    • 著者名/発表者名
      Seya T, Shime H, Takaki H, Azuma M, Oshiumi H, Matsumoto M.
    • 雑誌名

      Oncoimmunol.

      巻: 1 ページ: 917-923

    • DOI

      10.4161/onci.21244

    • 査読あり
  • [学会発表] RNAアジュバントによる腫瘍内マクロファージの機能転換を介した新規抗腫瘍作用2013

    • 著者名/発表者名
      志馬寛明、松本美佐子、押海裕之、瀬谷司
    • 学会等名
      「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動」 公開シンポジウム
    • 発表場所
      学術総合センター 一橋記念講堂(東京都)
    • 年月日
      20130129-20130130
  • [学会発表] Splenic CD11b+Gr1+ cells turn NK activators by dsRNA in tumor-implant mice2012

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki SHIME, Misako MATSUMOTO, Tsukasa SEYA
    • 学会等名
      日本免疫学会
    • 発表場所
      神戸国際展示場(兵庫県)
    • 年月日
      20121205-20121207
  • [学会発表] NK cell activation by tumor-associated myeloid cells during RNA adjuvant therapy for cancer2012

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki SHIME, Misako MATSUMOTO, Tsukasa SEYA
    • 学会等名
      IEIIS2012
    • 発表場所
      学術総合センター 一橋記念講堂(東京都)
    • 年月日
      20121023-20121026
  • [学会発表] The role of tumor-associated myeloid cells in RNA adjuvant therapy2012

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki SHIME, Misako MATSUMOTO, Tsukasa SEYA
    • 学会等名
      日本癌学会
    • 発表場所
      札幌市教育文化会館(北海道)
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] A crucial RNA adjuvant for immunotherapy for cancer2012

    • 著者名/発表者名
      Tsukasa Seya, Misako Matsumoto, Hiroaki Shime, Masahiro Azuma
    • 学会等名
      日本癌学会
    • 発表場所
      さっぽろ芸文館(北海道)
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 担癌宿主で増加するCD11b+Gr1+細胞は2本鎖RNAの投与によりNK細胞活性化能を獲得する2012

    • 著者名/発表者名
      志馬 寛明、児島 絢子、松本 美佐子、瀬谷 司
    • 学会等名
      日本がん免疫学会
    • 発表場所
      北海道大学(札幌)
    • 年月日
      20120726-20120728
  • [備考] 北海道大学大学院医学研究科免疫学分野

    • URL

      http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~e20536/

  • [備考] 悪玉の腫瘍内マクロファージを善玉に変えてがんを治す試みに成功

    • URL

      http://www.hokudai.ac.jp/bureau/topics/press_release/120117_pr_med.pdf

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公開日: 2014-07-24  

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