研究課題
基盤研究(C)
コネキシン32をゴルジ体に過剰発現する細胞システムの作製: ヒト肝細胞癌(HCC)由来の細胞株HuH7およびLi-7に対して、doxycycline (Dox)の有無でコネキシン32(Cx32)の発現を制御できるシステム(HuH7 Tet-off Cx32およびLi-7 Tet-off Cx32)を作製し、対照としてTet-off mock細胞も準備した。4 µg/ml Doxを培地に添加した際には外来性Cx32の発現が抑えられ、内因性Cx32のみが発現していたが、Doxを含まない通常の培地に変えることによりCx32をほぼ5倍まで過剰発現させることができた。これらの細胞をマウスに異種移植するin vivo実験の際には、飲料水に2 mg/ml Doxを添加することで外来性Cx32の発現を完全に抑えることができ、通常の飲料水を与えることで、Cx32の発現量を大幅に上昇させることができた。これらの細胞において、Cx32の細胞内局在を確認したところ、Cx32が細胞膜でギャップ結合を形成することはなく、ゴルジ体に局在していた。癌幹細胞画分の解析とその自己複製の解析: side population(SP)と呼ばれる、Hoechst 33342蛍光色素の排出が亢進しこの色素に染まらない細胞集団をもって、癌幹細胞(CSC)とみなした。細胞回収後に生細胞をHoechst 33342で染色し、セルソーター(FACS)でSPの割合を測定した。CSCのnon-CSCへの成熟を抑制し、CSCの性質を維持した状態で培養するために、SPをFACSで分取し非接着性無血清培地内で培養した。この条件でCSCのみがsphereを形成し、このsphereの数とサイズを計測することで、CSCの自己複製能を評価した。以上によりCSCの数と自己複製能を解析するアッセイ法を確立した。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究においては、Cx32のゴルジ体への貯留が、いかにして小胞体ストレス応答を惹起するのか、そしてこれがCSCの自己複製をいかに制御するのかを明らかにしていきたい。平成24年度中の研究において、上記目的を達成するための各種実験に必要なモデル細胞システムを作製するとともに、癌幹細胞を解析するためのアッセイ法を確立することができた。順調に計画が遂行されており、次年度の新たな段階の研究を遂行できる状況にある。
ATF6の活性化状態の評価: 小胞体ストレス応答のシグナル伝達に関与するATF6は、不活化状態で小胞体に局在するが、ゴルジ体に移行すると、ゴルジ体にある2種のプロテアーゼ(S1PとS2P)により断片化される。プロセッシングを受ける前の不活化型ATF6は約90 kdであるが、プロセッシングを経た活性化型ATF6は約50 kdの断片となる。したがって、ウェスタンブロットで90 kdと50 kdのバンドを比較することにより、ATF6の活性化を評価する。ATF6の発現量と活性化の抑制: ATF6の発現量もしくは活性化を抑制した際に、コネキシン32(Cx32)過剰発現に伴う癌幹細胞(CSC)の自己複製亢進が生じるかどうかを調べる。ATF6の発現量抑制のためには、ATF6に対するsiRNAを導入してノックダウンをし、活性化の抑制のためには、S1Pに対するsiRNAによりプロセッシング酵素をノックダウンする。Cx32過剰発現に伴うATF6の動態の解析: 不活化型ATF6は小胞体に局在し、ゴルジ体を経て核内に移行する。そこで、Cx32の過剰発現を誘導した際のATF6の局在の変化を調べるために、細胞を経時的に免疫蛍光染色して共焦点顕微鏡で観察、Cx32の過剰発現に伴う局在の変化を解析する。
本年度予定していた実験に必要な試薬キットが生産ラインのトラブルで販売が休止しており、次年度7月に生産が再開されることになったので、本年度の研究費を次年度に繰り越した。その他、各種抗体や試薬等の消耗品、実験動物、国内学会発表のための旅費に使用する。
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