研究課題
肝細胞癌細胞株におけるコネキシン32 (Cx32)の局在の同定: ヒト肝細胞癌由来細胞株HuH7、Li-7、HepG2において、Cx32の局在を免疫蛍光法で調べた。どの細胞においても、本来細胞膜に局在するはずのCx32が細胞質に局在した。さらに、各種細胞内オルガネラのマーカーと重染色したところ、Cx32とゴルジ体マーカーのシグナルが重なっており、調べた細胞内においてCx32がゴルジ体に局在していることが分かった。Cx32のゴルジ体内過剰貯留によるストレス応答の惹起: 培養液からdoxycycline (Dox)を除くことで外来性のCx32を過剰発現させることのできるHuH7 Tet-off Cx32細胞を用いて、Cx32のゴルジ体内過剰貯留を誘導したところ、小胞体ストレス応答タンパクの内、ストレス適応タンパクであるGRP78の発現が著増することを発見した。Cx32のゴルジ体内過剰貯留がもたらすATF6α活性化の発見: 小胞体ストレス応答のシグナル伝達に関与するATF6αは、不活化状態で小胞体に局在するが、ゴルジ体に移行すると2種のプロテアーゼ(S1PとS2P)により断片化される。そこで、HuH7 Tet-off Cx32細胞にCx32のゴルジ体内貯留を誘導したところ、ATF6αの活性化が亢進することが明らかとなった。Cx32依存性癌幹細胞(CSC)自己複製におけるATF6α活性化の関与: ATF6αの発現量もしくは活性化の抑制が、Cx32依存性CSC自己複製にどのような影響がもたらされるかを調べるために、ATF6αやS1Pプロテアーゼに対するsiRNAを導入したところ、Cx32依存性CSC自己複製亢進がみられなくなった。したがって、Cx32のゴルジ体内貯留によるATF6αの活性化がCSC自己複製に必要であることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究においては、Cx32のゴルジ体への貯留が、いかにして小胞体ストレス応答を惹起するのか、そしてこれがCSCの自己複製をいかに制御するのかを明らかにしていきたい。平成25年度中の研究において、Cx32のゴルジ体内貯留によるATF6αの活性化亢進がCSCの自己複製をもたらすことが明らかとなった。順調に計画が遂行されており、次年度の新たな段階の研究を遂行できる状況にある。
ATF6α活性の変化に伴う下流遺伝子の発現解析: 活性化型ATF6αは核内転写因子として、GRP78やcalretininなどの小胞体ストレス応答タンパクの遺伝子を制御する。そこで、ATF6α活性の変化に伴う下流遺伝子の発現量の変化を定量的RT-PCRで詳細に調べる。Cx32とATF6αとの複合体形成の検討: Cx32とATF6αがゴルジ体で複合体を形成していることを確認するために、Cx32の過剰発現時に抗Cx32抗体を用いて免疫沈降を行いATF6αの共沈を検討する。Cx32がATF6α自身ではなく、そのプロセッシング酵素S1PまたはS2Pである可能性もあるので、これら酵素とCx32との複合体形成も検討する。また、Cx32の膜輸送が正常に維持され、Cx32のゴルジ体への貯留がみられないHeLa細胞において同様の実験を行い、ゴルジ体への貯留が複合体形成に重要であることを示す。活性化型ATF6α過剰発現細胞の作製とCSC数の変化および造腫瘍能の検討: HuH7細胞やLi-7 細胞に、活性化型ATF6αのcDNAをレトロウイルスベクターを用いて導入し、活性化型ATF6α過剰発現株を作製する。これらの細胞におけるCSCの増減を、評価するとともに、SCIDマウス皮下への異種移植により造腫瘍能を検討することで、ATF6αのCSC制御への関与を明らかにする。
本年度予定していた委託実験を施行したが、データ解析に時間がかかっており、現在のところまだ納品されていない。したがってこれを支出として計上していないため、見掛け上、次年度使用額が生じた。また、一部の結果が予想外であり、実験計画の組み換えを行ったために、一部の研究費を次年度に繰り越すことにした。各種抗体や試薬等の消耗品、実験動物、国内学会発表のための旅費に使用する。
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Cell Death Differ.
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10.1038/cdd.2014.3
Uro Today
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http://www.med.akita-u.ac.jp/~byouri1/