研究課題/領域番号 |
24590473
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
岡野 聡 山形大学, 医学部, 助教 (60300860)
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研究分担者 |
中島 修 山形大学, 医学部, 教授 (80312841)
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キーワード | 膵β細胞 / インスリン分泌 / 細胞老化 / SASP / 糖尿病 / 生物時計 / 時計遺伝子 / 概日リズム |
研究概要 |
変異型CRY1-Tgマウスの糖尿病発症機序の解明を目的とし、血糖値が正常で糖毒性の影響がない若齢マウス(4週齢)から膵島を単離しDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、Tgマウス膵島に於いて、E-box制御下の時計遺伝子の発現が著しく減少していることが確かめられた。新たに、膵β細胞においてM3ムスカリン性アセチルコリン受容体を介するインスリン分泌経路の抑制因子として働くことが報告されているRGS4の発現が、Tgマウス膵島で顕著に亢進していることを見いだした。このことは、Tgマウスのインスリン分泌不全の重要な要因であると考えられる。老化細胞に特徴的な現象であるSASP(senescence-associated secretory phenotype)のマーカーである細胞周期阻害因子、炎症性サイトカインやケモカイン等の一群の遺伝子の発現がTgマウス膵島で増加していた。以上の結果から、(1) 変異型CRY1は膵島において時計遺伝子のみならず、膵β細胞のインスリン分泌制御に関与する遺伝子の発現に影響を及ぼすこと、(2) 変異型CRY1は膵島において細胞老化を惹起し、細胞老化と膵β細胞の機能破綻は密接に関連していること、が強く示唆された。さらに、東北大加齢研安井明教授と共同研究を行い、変異型CRY1を誘導的に発現するHEK293細胞を樹立した。この細胞を用いて、未知の細胞老化惹起メカニズムの解明や、プロテオミクス解析によるCRY1結合蛋白質の探索を行っている。時間生物学的解析については、制限給餌(RF)の時間タイミングを前進させるRFのjet-lag実験を実施し、変異型CRY1-Tgマウスでは、視交叉上核はRFに同調するのみならず、RFの位相前進に合わせて新たなRF時刻に再同調が可能であることが強く示唆され、時計振動体の特徴をさらに明らかにすべく解析を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
懸案であった単離膵島のマイクロアレイを実施することができ、変異型CRY1は、膵島において時計遺伝子やインスリン分泌制御因子の発現を変化させるとともに、細胞老化を惹起することを明らかした。この知見により、Tgマウスの膵β細胞機能不全の分子機構の解明が大きく前進した。また、東北大学加齢医学研究所安井明教授と共同研究を開始し、変異型CRY1を薬剤添加により誘導的に発現するHEK293細胞の樹立を行い、あらたにヒト細胞の実験系の確立にも成功した。この細胞とTgマウス用いて、現在、細胞老化惹起メカニズムの解明を鋭意行っている。また、細胞を用いたプロテオミクス解析によるCRY1結合蛋白質の探索も進行中であり、既に幾つかの予備的な結果が得られている。 Tgマウスを用いた時間生物学的解析では、引き続き給餌性概日リズムの解析を進展させ、給餌のjet-lag実験を実施し、得られた研究成果をミュンヘンで開催された国際学会で発表することができた。この概日リズム研究の成果を論文に投稿すべく、現在研究代表者が論文執筆を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の解析から、変異型CRY1は膵島の細胞老化を惹起し、細胞老化が糖尿病発症と密接に関わっていることを強く示唆する実験結果を得たのでこの解析をさらに深化させる。1)上記のHEK293細胞にテトラサイクリン誘導によって変異型CRY1を発現させた後、細胞老化のマーカーとして知られるSA-βGAL活性を測定し、核の老化特異的ヘテロクロマチン構造の有無や細胞形態を詳細に解析する。FACSを用いて細胞周期の解析を行う。DNA損傷の定量を行う。変異型CRY1がもたらす細胞老化の誘導経路を明らかにする為に、Chk2-p53経路やNF-κBを介した経路等の活性化の有無を種々の手法を用いて解析する。2)変異型CRY1-Tgマウスの膵島を用いて、上述の1と同様の手法で膵β細胞の細胞老化を解析し、糖尿病発症と細胞老化の関わりと、その分子メカニズムを解明する。3)膵β細胞株に変異型CRY1を発現させ、レポーターアッセイやクロマチン免疫沈降法等の手法を用いて、RGS4遺伝子の転写制御におけるCRY1の役割を解明する。4)上記HEK293細胞株を用いた免疫沈降とnano LC-MS/MS質量分析機を用いて新規CRY1結合蛋白の同定を行う。同定した蛋白の生物時計や膵β細胞の機能制御の解析を分子細胞生物学と生化学的手法を用いて行う。5)個体レベルでのリズム解析をさらに進展させ、Tgマウスの時計振動体の特徴をさらに明らかにするとともに概日リズム異常と糖尿病発症との関連を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
DNAマイクロアレイ等の研究結果の解析や解釈に時間を要し、その研究成果をふまえた次の解析に必要な物品の一部を次年度に購入することにした為 変異型CRY1を発現するHEK293細胞と、免疫沈降法及び質量分析装置による解析を組み合わせたプロテオミクス解析に必要な消耗品及び抗体を購入する。また、DNAマイクロアレイの結果をふまえ、上述の細胞や膵ベータ細胞株及びマウスの単離膵島を用いて各種の分子細胞生物学的解析を行う為、必要な消耗品やキット類を購入する。概日リズム解析や組織解析等のマウス個体レベルの解析に必要な消耗品も購入する。
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