研究課題/領域番号 |
24590474
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
右田 敏郎 東京大学, 医学部附属病院, 研究員 (20462236)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脂質代謝 / アンドロゲン代謝 / 前立腺がん |
研究概要 |
前立腺がんはホルモン依存性増殖を特徴とし、アンドロゲンの除去が治療の上で最も有効であるが、やがて耐性を獲得し転移性、難治性となる。前立腺がんではDe novo脂肪酸合成が盛んである事がよく知られている。アンドロゲン枯渇環境下でもがん細胞が増殖できるメカニズムとして、がん細胞がde novo脂肪酸合成系を介して、内因性アンドロゲンを合成することにより、自律性増殖を可能にしているという仮説を立てている。 アンドロゲン依存性前立腺がん細胞株LNCaPにおいて、De novo 脂肪酸合成酵素の一つであるAcyl-CoA synthetase (ACSL)の発現をノックダウンすると、増殖の抑制が確認された。また、この細胞にACSLを過剰発現させ、安定発現株を得た。この細胞株ではコントロール細胞に比べてde novo androgenesis に関わる酵素群の有意な発現の上昇を認め、アンドロゲン応答性遺伝子群の発現上昇も認めた。 現在、細胞と培地の混合物からステロイドを抽出し、液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)にてテストステロン、ジヒドロテストステロンの濃度を測定している。また過剰に産生された脂肪酸のリガンドとしての機能を調べるため、その標的となる転写因子や下流遺伝子の同定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん細胞における脂肪酸合成の亢進の生物学的意義については未だに不明な点が多い。今回の研究の目的の一つは、脂肪酸合成の亢進によるアンドロゲン代謝への影響を調べる事であるが、今回アンドロゲン代謝に関わる酵素群の発現上昇などが初めて確認された。これらの制御メカニズムや具体的な代謝異常経路はまだ決定されていないが、最終的なアンドロゲン応答性の亢進が確認できたことから、がん細胞自らが代謝のリプログラミングを行うことよりホルモン代謝を生存に有利に導いていることが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
アンドロゲン代謝に関わる酵素群の発現レベルを確認し、責任代謝経路を同定する。また、テストステロン合成に関わる液性因子(コレステロール、脂肪酸、アンドロゲン前駆体など)で細胞を刺激し、どのような因子ががん細胞のアンドロゲン合成に関わっているのかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞内アンドロゲンや中間代謝産物の濃度測定のための企業への委託費用など。その他、細胞株の維持、RNA/タンパク発現解析、蛍光染色、免疫組織化学などに必要な材料、キットの購入に使用する。
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