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2012 年度 実施状況報告書

MCM2の作用を用いた抗腫瘍治療モデルの開発

研究課題

研究課題/領域番号 24590476
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

北川 昌伸  東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10177834)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードアポトーシス / 腫瘍 / DNA損傷 / 治療 / モデル動物
研究概要

我々はC3Hマウスにおいてレトロウイルスの一つであるフレンド白血病ウイルス(FLV)の感染が放射線誘発p53依存性アポトーシスを著明に増強する実験系を見出した。FLVに感染したC3Hマウスに低線量の放射線を全身照射すると、マウスは照射後2週間で著明な貧血を起こして死亡し、骨髄造血細胞には高頻度のアポトーシスが観察される。この現象に関与する宿主特異的因子を同定するため、FLV接種後に放射線照射したマウス骨髄より採取した蛋白のTOF-Mass解析を行った。C3HマウスとDBAマウスの比較により、AcinusおよびMCM2という2つの分子がC3Hマウス特異的に見出された。
まずin vitroの実験系を用いてこの現象の機序を徹底解明し、新たなアポトーシス誘導経路に関わるMCM2の作用を明らかにするとともに、その作用機構の全貌を解明すること及びそれを応用した治療モデルの作製を目的として実験を行った。MCM2の本来の機能はDNA複製の際に必要な helicase作用であり核内で機能する。in vitroでの解析から、MCM2はFLV由来のgp70蛋白と結合することにより核内移行が阻害され、細胞質内にとどまることでDNA-PKの活性化、p53依存性アポトーシスを誘導することがわかった。この細胞内局在変化に伴う作用転換を応用すれば、多くの腫瘍で発現が増強していることが知られているMCM2の作用をアポトーシス誘導へと向かわせるシグナルに変換することができると考えられる。
そこで、MCM2を主体とするアポトーシス増強効果の詳細な作用機構の解析と、特異的結合分子を用いたMCM2の機能修飾によるヒトの抗腫瘍治療実験系の開発を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

In vivo解析からin vitroの実験系までを通じて、宿主特異的なアポトーシス誘導機構が明らかになった。さらに治療実験モデル開発についても、白血病細胞を用いたin vivoおよびin vitroのモデルを用いた解析で、ある程度の成果が得られた。

今後の研究の推進方策

さらにMCM2のアポトーシス増強作用のメカニズムの詳細を探るとともに、白血病以外の固形腫瘍についても治療実験モデルを構築する。また、ヒトへの応用という観点から、ヒト細胞を用いた実験系で同様の系を見出す必要がある。ヒトの分子ではマウスのウイルス蛋白では同じ現象は観察されないので、新しい分子を見出す努力を継続する。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度の研究成果をもとにした比較解析と、その応用を目指した実験を行っていく。遺伝子治療モデル実験についてはこれまでの研究で骨髄移植を用いた非常に良い系を確立することに成功した。さらにMCM2遺伝子のin vitro、in vivoでの機能解析と治療への応用を進める。
ヒトへの応用を考える際には、実際に各種病態で起こっているシグナル関連分子の動態を臨床検体を用いて解析することも重要で、臨床現場の研究協力者が必要である。また、ヒトのMCM2機能を修飾する分子の探索と薬剤開発、治療への応用を考える際の基礎的実験を行う専門家の研究協力も必要となる。
具体的には、1)トランスジェニックマウスの作製準備: C3H以外の系統のマウスに宿主特異的遺伝子(MCM2)の導入を計画する。FLV感染後にDNA損傷を起こした場合に骨髄細胞にアポトーシス増強作用が付加されているかどうかを解析する。動物の購入、飼育費用が必要となる。2)MCM2発現の高い白血病細胞にgp70とDNA-damageを導入して腫瘍の治療効果が得られるかどうかを検証する。予備実験では優れた効果が得られている。必要な試薬、器具類を購入する。3)固形腫瘍についても同様のアプローチを行う。4)マウスとヒトのMCM2遺伝子配列の比較から核移行シグナルに関わるMCM2のdomainに結合するようなgp70遺伝子産物のホモローグを同定し、ヒト腫瘍細胞株への導入、過剰発現による機能解析、アポトーシス増強作用の解析を行うために、必要な試薬、器具類を購入する。5)臨床材料を用いた造血器系腫瘍の病態解析も継続し、関連する細胞内シグナルの修飾への応用を図るため、必要な試薬、器具類を購入する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Giant cell carcinoma causing rapidly progressive respiratory failure as the presenting feature of acquired immunodeficiency syndrome.2012

    • 著者名/発表者名
      Sugawara E, Yamamoto K, Umeda S, Suzuki S, Kurata M, Endo Y, Uchibori K, Akashi T, Inase N, Kitagawa M.
    • 雑誌名

      Int J STD AIDS

      巻: 23 ページ: e7-e8

    • DOI

      10.1258/ijsa.2009.009519.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Identification of ALK Fusions in Renal Cancer: a Large Scale Immunohistochemical Screening by intercalated Antibody-enhanced Polymer Method.2012

    • 著者名/発表者名
      Sugawara E, Togashi Y, Kuroda N, Sakata S, Hatano S, Asaka R, Yuasa T, Yonese J, Kitagawa M, Mano H, Ishikawa Y, Takeuchi K.
    • 雑誌名

      Cancer

      巻: 118 ページ: 4427-4436

    • DOI

      10.1002/cncr.27391

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Expression of MCM2 in the bone marrow of myelodysplastic syndromes: association with apoptosis and peripheral leukocytopenia.2012

    • 著者名/発表者名
      Suzuki S, Kurata M, Abe S, Miyazawa R, Murayama T, Hidaka M, Yamamoto K, Kitagawa M.
    • 雑誌名

      Exp Mol Pathol

      巻: 92 ページ: 160-166

    • DOI

      10.1016/j.yexmp.2011.11.003

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Minichromosome Maintenance 2 bound with retroviral Gp70 is localized to cytoplasm and enhances DNA-damage-induced apoptosis.2012

    • 著者名/発表者名
      Abe S, Kurata M, Suzuki S, Yamamoto K, Aisaki K, Kanno J, Kitagawa M.
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 7 ページ: e40129

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0040129

    • 査読あり
  • [学会発表] DNA損傷アポトーシス増強によるin vivo腫瘍治療モデル2012

    • 著者名/発表者名
      北川昌伸、阿部晋也、倉田盛人、鈴木志保、菅原江美子、大西威一郎、桐村進
    • 学会等名
      第71回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120921-20120921
  • [学会発表] DNA損傷誘発アポトーシスにおけるMCM2の機能解析2012

    • 著者名/発表者名
      阿部晋也、倉田盛人、鈴木志保、日高龍路、名桐俊也、北川昌伸
    • 学会等名
      第71回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120920-20120920
  • [学会発表] DNA損傷誘発アポトーシス増強におけるMCM2の機能解析2012

    • 著者名/発表者名
      阿部晋也、倉田盛人、鈴木志保、日高龍路、名桐俊也、北川昌伸
    • 学会等名
      第101回日本病理学会総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120428-20120428
  • [学会発表] 造血器系腫瘍における細胞増殖の場2012

    • 著者名/発表者名
      北川昌伸、倉田盛人、鈴木志保、梅田茂明、菅原江美子、阿部晋也
    • 学会等名
      第101回日本病理学会総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120426-20120426
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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