研究実績の概要 |
精子幹細胞のニッシェへの生着にaPKC分子が関与するかを検証すべく、当該分子のコンディショナルノックアウト精巣細胞の移植アッセイを行った。これまでの研究からPKCzが関与しないこと(KOマウスはNo phenotype)が示されていたため、PKClについて検証を進めた。まず、PKCl flox マウス(Creリコンビナーゼによる遺伝子組み換えによりPKCl遺伝子欠損となる)とR26Rマウス(Creリコンビナーゼによる遺伝子組み換えによりLacZ遺伝子が発現し、遺伝子組み替えを受けた細胞がX-galにより青染される)を掛け合わせ、PKClflox/flox;R26Rマウスを作製した。このマウスの精巣細胞にAxCANCreアデノウイルスを感染させた後、不妊マウス精巣へ移植を行った。移植3ヶ月後に精巣を回収、X-gal 染色により移植された精子幹細胞由来のコロニーを計測し、コントロール(野生型PKClを有するマウス)のものと比較した。結果、PKCl単独の欠損ではコントロールとの差がみられなかった。PKCz KOマウスは精子形成などに異常が見られないが、①ホーミングについては検証されていない、②PKCl欠損を保管している可能性がある、という二つの可能性が考えられた。そこで次に、PKClflox/flox;PKCz-/-;R26Rマウスを作製し同様の検証を行った。しかしながら、このマウスの精子幹細胞もまたホーミングに関しては野生型と有意な差は認められなかった。 精子幹細胞はホーミング時血液精巣関門を通過するために密着結合分子CLDN3を発現する必要がある(Takashima et al., 2011)。密着結合分子が細胞表面に表出し正しく機能するにはaPKCによる細胞極性制御が必須であることから本研究を着想したが、aPKC分子はホーミングに必要がないという予想外の結果を得た。
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