研究課題/領域番号 |
24590485
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
中田 知里 大分大学, 医学部, 助教 (60379625)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | microRNA / 腎細胞癌 |
研究概要 |
1.miR-210-Tgマウスを用いた個体レベルの機能解析(系統の樹立~病理学的・解剖学的解析) miR-210過剰発現が腎癌発生にどのように関与しているかを個体レベルで解析するために、近位尿細管特異的プロモーターによってmiR-210を発現するmiR-210トランスジェニックマウスを作製した。高発現1系統、低発現2系統の3系統が獲得できた。現在は繁殖させている段階であるが、若年マウスについて腎組織が正常に発生・分化しているかを組織学的に観察中である。今後マウスが老齢に差し掛かるので、腎腫瘍が発生するかを病理学的に解析し、さらに体重、寿命なども同腹の野生型マウスと比較していく。 2.miR-210過剰発現細胞で多極紡錘体が形成されるメカニズムの解析(腎癌におけるmiR-210標的分子の特定) miR-210標的分子を特定するために、HEK293不死化細胞、786O、Caki2、ACHNの腎癌細胞株にmiR-210前駆体オリゴあるいはmiR-210発現ベクターを導入してRNAを回収し、マイクロアレイを行った。細胞間で共通して変動する遺伝子を抽出し、さらにmicroRNA標的検索アルゴリズム(TargetScanやPicTar)を利用して絞込みをおこなった。抽出された遺伝子群には、細胞分裂を直接的に制御している分子は含まれていなかったが、これらの分子の発現変動が間接的に細胞分裂異常を起こしている可能性がある。今後は抽出した遺伝子について、これらを発現抑制することによって細胞に分裂異常が起こるかどうかを観察する。また、miR-210によって発現変動する遺伝子群についてパスウェイ解析を行い、特定のシグナル経路を変動させるかどうかを調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
miR-210トランスジェニックマウスが計画通りに誕生し、特に高発現マウスが1系統獲得できた。現時点で交配に問題がなく、順調に繁殖できており、25年度には研究に必要な個体数が確保できると考えられる。また、マウスが老齢に差し掛かり、腎腫瘍が発生するかなどの病理学的な観察を開始できる。 マイクロアレイを用いてmiR-210過剰発現により変動する遺伝子群を絞り込んだ。今後はsiRNAを用いた発現抑制による多極紡錘体形成に関与する分子の同定と、miR-210の過剰発現によって影響を受けるシグナル経路の検索を行う。
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今後の研究の推進方策 |
1.miR-210-Tgマウスで誘発された腎癌は、ヒト腎癌と似た性質を有しているか?・・・miR-210-Tgマウスが腎癌を発症した場合、そのゲノム異常や発現異常についてヒト癌との共通点・相違点を明らかにしておくことは、将来モデル動物として治療法の研究・開発に用いるために重要である。マウス腫瘍について、マイクロアレイを用いてゲノム異常、messengerRNAとmicroRNAの発現異常を同定し、ヒト腎癌と比較する。 2.miR-210-Tgマウスにおいて化学発癌を誘導し、miR-210の悪性化への関与を解析する・・・マウスに鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)を腹腔内投与すると腎腫瘍が発生する。これをmiR-210-Tgマウスに投与し、腫瘍発生の時期や異型度について野生型マウスと比較を行い、miR-210過剰発現が癌の悪性化・進行に関与している可能性について調べる。 3.続:miR-210過剰発現により多極紡錘体が形成されるメカニズムの解析(腎癌におけるmiR-210標的分子の特定)・・・24年度にマイクロアレイにより検索されたmiR-210標的候補遺伝子をsiRNAをもちいた機能解析により絞り込み、多極紡錘体形成に関与するものを特定する。また、パスウェイ解析により、miR-210の過剰発現がどのようなシグナル経路に影響を与えているかどうか調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養細胞を用いた機能解析のために、細胞培養に関連する消耗品(培地、血清、培養添加物等の試薬、培養ディッシュ)、各遺伝子に対するsiRNAやPCRプライマーなどの合成オリゴ、抗体を購入する。 また実験動物を用いた個体レベルでの機能解析のために、マウスの飼育に必要な経費を計上している。また、解析に必要なマイクロアレイ(アジレント社製)と関連試薬(ラベル試薬、ハイブリ試薬)、組織観察のための染色関連の消耗品(スライドグラス、染色試薬)を購入する。
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