研究課題/領域番号 |
24590485
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
中田 知里 大分大学, 医学部, 助教 (60379625)
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キーワード | microRNA / 腎細胞癌 |
研究概要 |
1.miR-210-Tgマウスを用いた個体レベルの機能解析(病理学的・解剖学的解析) 昨年度に尿細管特異的にmiR-210 を発現するトランスジェニックマウスを作製している。今年度はこのマウスを繁殖させ、若年マウスについて腎組織が正常に発生・分化しているかを組織学的に観察した。老齢マウスの個体数も増えてきたため、腎組織の異常の有無、また腎腫瘍が発生しているかを病理学的に解析中である。今後も個体数を蓄積しながら体重、寿命なども同腹の野生型マウスと比較していく。 2.多極紡錘体が形成されるメカニズムの解析(腎癌におけるmiR-210標的分子の特定) 昨年度にマイクロアレイを用いてmiR-210標的遺伝子の候補を絞り込んでいる。得られたリストには直接的に細胞分裂に関与している遺伝子はなかったが、今年度、siRNAを用いた発現抑制を行ったところ、分裂異常が起きた遺伝子があった。これまでに発癌や癌転移などに関与しているといった報告がない分子で、今後はこの遺伝子がどのように分裂異常を引き起こしているか、またどのようなシグナル経路に関与しているか、培養細胞を用いて機能解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
出産・育児休業のため、半年ていど研究を離れたため、培養細胞を用いた細胞生物学的な実験にやや遅れが出た。しかしながら、休業中もトランスジェニックマウスの飼育・繁殖を継続し、解析に用いる個体数を増やすことができたので、マウスの組織学的・病理学的な解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1.miR-210-Tgマウスで腎がんが誘発されるか?・・・老齢のmiR-210-Tgマウスについて、腎癌を発症するか否かを病理学的に観察する。また腎機能についても評価する。腎癌を発症した場合、マイクロアレイを用いてゲノム異常、messengerRNAとmicroRNAの発現異常を同定し、ヒト腎癌と比較する。 2.miR-210-Tgマウスにおいて化学発癌を誘導し、miR-210の悪性化への関与を解析する・・・マウスに鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)を腹腔内投与すると腎腫瘍が発生する。これをmiR-210-Tgマウスに投与し、腫瘍発生の時期や異型度について野生型マウスと比較を行い、miR-210過剰発現が癌の悪性化・進行に関与している可能性について調べる。 3.続:miR-210過剰発現により多極紡錘体が形成されるメカニズムの解析(腎癌におけるmiR-210標的分子の特定)・・・miR-210標的候補遺伝子のなかに、siRNAを用いた発現抑制により細胞分裂異常を起こすものがあった。培養細胞を用いてこの遺伝子の作用機序を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
出産・育児休業のため、6ヶ月のあいだ研究を離れていたので、研究が当初の計画より若干遅れている。実際の研究の進行に合わせて、使用予定であった試薬などの消耗品について購入を次年度に見送ったものがあるため、差額が生じた。 25年度において、出産・育児休業のため研究が当初の計画より若干遅れたが、実験計画を26年度に持ち越して実行する。 培養細胞を用いた機能解析のために、細胞培養関連の消耗品(培養ディッシュ、血清、培地、培養添加物等の試薬)、遺伝子の機能解析に用いるsiRNA、発現確認のためのPCRプライマーや抗体を購入する。また実験動物を用いて個体レベルでの解析を行うために、マウス飼育のための経費を計上している。また網羅的解析に必要なマイクロアレイ(アジレント社製)と関連試薬(ラベル試薬、ハイブリ試薬)、病理学的観察のために染色関連の消耗品(スライドグラス、染色試薬)を購入する。
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