研究課題/領域番号 |
24590485
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
中田 知里 大分大学, 医学部, 助教 (60379625)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | microRNA / トランスジェニックマウス / 腎細胞癌 |
研究実績の概要 |
1.miR-210-Tgマウスを用いた個体レベルの機能解析(病理学的・解剖学的解析) H24年度に作製した尿細管特異的にmiR-210を発現するTgマウスについて、in situ hybridizationを行って発現部位を確認した。また、腎臓以外の臓器で発現が誘導されていないことをqRT-PCRによって確認した。老齢マウス(53週齢以上)の個体から腎臓を摘出し、腎組織の構築、腎腫瘍が発生しているかについて病理学的に観察している。同時に、腎機能を評価するために、血清を回収してクレアチニン(CRE)と尿素窒素(BUN)の測定を行った。来年度も、個体数を蓄積しながら野生型マウスとの比較を継続する。またmiR-210過剰発現が腎臓の遺伝子発現に与える影響を調べるために、マイクロアレイによる網羅的解析を行った。Tgマウスと野生型で異なる発現が認められた遺伝子には、マウスにおけるmiR-210標的候補遺伝子が含まれており、変動した遺伝子群を用いてパスウェイ解析を行ったところ、Tgマウス腎臓で最も変動したシグナル経路は炎症に関与するものであった。
2.腎癌におけるmiR-210標的分子の特定 H24年度にヒト腎癌細胞株を用いたマイクロアレイ解析を行い、miR-210標的遺伝子の候補を絞り込んでいる。これらの中に、miR-210-Tgマウスの腎臓においても発現低下が認められたものがあった。両方で検出された分子は、種を超えて標的として保存されているものである(ORFに比べてmRNA 3’-UTRは種間であまり保存されていないことから、ヒトとマウスで同じ挙動をする標的候補は少ない)ことから、miR-210過剰発現時の表現型に対して特に重要な役割を担っていると考えている。次年度は、これらの分子についての機能解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度末に出産し、事業期間内に6ヶ月の育児休業を取得したため、特に培養細胞を用いた機能解析について、当初の計画より半年ずつ遅れて進んでいる。そのため、補助事業期間の延長を申請し、承認を受けた。しかしながら、育児休業以外の理由による遅れはないため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1.miR-210-Tgマウスにおいて化学発癌を誘導し、miR-210の悪性化への関与を解析する・・・マウスに鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)を腹腔内投与すると腎腫瘍が発生する。これをmiR-210-Tgマウスに投与し、腫瘍発生の時期や異型度について野生型マウスと比較を行い、miR-210過剰発現が癌の悪性化・進行に関与している可能性について調べる。
2.続:miR-210過剰発現により多極紡錘体が形成されるメカニズムの解析(腎癌におけるmiR-210標的分子の特定)・・・miR-210標的候補遺伝子に対するsiRNAを用いて発現抑制を行い、機能解析を行う。また、これらが細胞分裂異常を引き起こすか否かを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業期間内に出産、育児休業を取得したため、当初の研究計画より半年程度遅れて進んでいる。これについて、補助事業期間の延長を申請し、承認された。 実際の研究の進行に合わせて物品を購入していること、また、参加を見合わせた学会があったことから、上記の残予算が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度に実験計画を持ち越して実行する。培養細胞を用いた実験のための血清、培地、培養ディッシュ等の消耗品、各遺伝子に対するsiRNAやPCRプライマーなどの合成オリゴ、抗体を購入する。また遺伝子改変動物の飼育に必要な経費を計上している。また、組織観察のために染色関連の消耗品を購入する。
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