研究課題
1)miR-210-Tgマウスを用いた個体レベルの機能解析(病理学的解析)H24年度に作製した尿細管上皮特異的にmiR-210を発現するTgマウスについて、病理学的解析を試みた。Tgマウスを最長96週齢まで観察したが、外見上はWTと違いがなかった。8,16,37,52,79,95週齢で腎臓を摘出し、病理学的に観察した。Tgマウスでは8週齢より腎皮質に炎症が認められ、リンパ球が浸潤していた。また加齢とともに尿細管が拡張する傾向や、血清中のクレアチニンの上昇が認められ、腎機能が低下することが示唆された。今回の結果より、miR-210過剰発現は、個体レベルにおいても細胞に傷害をもたらすことが明らかになった。今後、尿細管上皮が障害を受ける機序を明らかにしたい。2)腎癌におけるmiR-210標的分子の特定以前のin vitroの機能解析によって、miR-210過剰発現は細胞分裂異常を引き起こすことを明らかにしている。これまで実施したヒト腎癌細胞株を用いたマイクロアレイ解析と、miR-210-Tgマウスの腎臓におけるマイクロアレイ解析の両方で発現変動が認められた分子は、種を超えて標的として保存されているものである(ORFに比べてmRNA 3’-UTRは種間であまり保存されていないので、まれなことである)ことから、miR-210過剰発現時の表現型に対して特に重要な役割を担っていると考えている。これらの分子についてsiRNAを用いて発現抑制を行い、これらが細胞分裂異常を引き起こすか否かを調べたところ、分裂期遅延を伴って細胞増殖が低下するものをひとつ発見した。この分子は直接的に細胞周期に関与する(サイクリンやそのキナーゼ、p21のような)分子ではなかった。今後は、この分子の発現低下がmiR-210過剰発現の表現型をもたらしているかをまず検証し、その後、機能解析に入りたい。
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J Pathol.
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10.1002/path.4706
Cancer Sci.
10.1111/cas.12892