研究実績の概要 |
膠芽腫(Glioblastoma)は、極めて予後不良の悪性脳腫瘍であり、ブレークスルーが待望されている難治性癌である。本研究は膠芽腫の悪性形質の鍵となる機能遺伝子およびシグナル伝達を探索し、新規治療標的を見出すことを目的としている。IGFBP-2 と CD24 の膠芽腫の悪性形質への関与とその機序、そこに関わる新規機能遺伝子を探索し、glioma stem cell/tumor initiating cell や抗癌剤感受性への関わりを含めて解析した。 膠芽腫において、IGFBP-2、CD24 は浸潤、増殖、造腫瘍能に対して促進的に作用しているが、その発現の有無による抗癌剤感受性の変化は、薬剤・細胞によって促進される場合もあり抑制される場合もあることがわかった。膠芽腫細胞における抗癌剤耐性を解析したところ、解析した9種類の膠芽腫細胞株のうち、IGFBP2, CD24 が発現しているヒト膠芽腫細胞株T98G が最も多剤に耐性を示し、MGMT をsiRNA で抑制しても アルキル化剤temozolomide への抵抗性が抑制されなかった。この細胞ではDNA 修復因子 ABCC1、ABCC3、MSH6、ABCG2、薬剤耐性関連因子 TOP2A、BRCA2 の高発現が確認され、複数の耐性機序が働いていることがわかった。耐性機序におけるIGFBP-2, CD24発現の影響について解析を継続中である。 また、IGFBP-2 の発現を NFkappaB シグナルの中心的因子である RelA が促進してことがわかり、その抑制によって IGFBP-2 の発現シグナルが減弱することがわかり、NFkappaB シグナル抑制による膠芽腫治療の可能性が示唆された。 また、脳腫瘍以外の癌においても、IGFBP-2、CD24が高発現しているものがあることがわかり、まず膵臓癌において膠芽腫の場合との差違と共通点について解析を続けている。
|