研究課題/領域番号 |
24590487
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
田中 秀央 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60236619)
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研究分担者 |
足達 哲也 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60345014)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心房細動 / 線維化 / ギャップ結合 / カルシウム |
研究概要 |
心房組織の線維化組織と心筋細胞との間に生じる不均一な機械的歪み(ストレイン)が、心房細動の発生に重要な役割を演じている可能性を明らかにするために、摘出灌流したラットの心臓を用いて心房細動を誘発し、心房内の興奮伝導様式を細胞レベルで可視化することによりその発生源を同定、さらに発生源に有意な線維化が存在するか否かを全心房を組織学的に解析した。心臓の興奮伝導様式は、心外膜領域(15.9 mm x 13.6 mm)における膜電位感受性色素di-4-ANEPPSの蛍光強度変化を高速取得(毎秒500コマ)することにより得た。その結果、19例の心臓のうち15例に心房細動が誘発され、いずれも左心房後壁と心房中隔を含む左心房ルーフ部に伝導遅延が起こり、同部から興奮が心房全体に旋回(リエントリー)する心房粗細動の興奮伝導様式を示した。誘発された心房組織をホルマリン固定し組織学的解析を行ったところ、心房細動起源と考えられた組織では有意な心房密度の低下と線維成分の増多が観察され、さらに心房筋走行の均一性の低下とギャップ結合蛋白質コネキシン43の分布異常が見出された。これらの結果は、局所の線維化と心筋密度の低下、さらに心筋細胞の配列とギャップ結合タンパクの分布異常が、心筋の伝導性や異方向性の低下を増強し、心房細動の発生に重要な役割を演じている可能性を示唆するものと考えられた。さらに心房組織の機械的歪みを細胞レベルで捉えるため、高速共焦点レーザ顕微鏡を用いて心房のカルシウム動態を可視化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心房の巨視的な興奮伝導様式と組織学的解析から、心房細動の発生に心房局所の線維化が関与している可能性が明らかになった。また心房の細胞レベルのカルシウム動態の可視化に成功した。当初の計画では初年度より糖尿病心や加齢心を用い、さらに細胞レベルでの解析を行う予定であったが、健常心房を用いての巨視的な機能解析と詳細な組織学的解析を行ったことで、病的心との比較をする上で重要なデータが得られた。今後本研究の仮説を検証していくための重要な基礎的検討ができたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
心房のカルシウム動態の細胞レベルの可視化をさらに進め、心筋細胞と線維化巣との間に生じる歪みの解析を試み、興奮・収縮の異方向性の変化を健常心と比較することにより、心房内興奮伝導異常における歪みの関与を明らかにする予定である。また初年度は専ら健常心を用いての解析であったが、今年度は病的心を用いて実験・解析を推進する。これにより、線維化、心筋密度の低下、Cx43の分布異常、さらにこれらの空間的不均一性がいずれもより顕著になり、心房細動の易誘発性、興奮伝導様式の複雑化、細動持続時間の延長など、不整脈源性が増強するか否かを解明できるものと予想される。さらに種々の病的心モデルを用いた心房のカルシウム動態異常についても解析する予定である。具体的には糖尿病心や加齢心での線維化モデルに加え、局所の線維化やリモデリングがより顕在化すると予想される弁膜症モデルや心筋梗塞モデルをも作成し、解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、初年度と同様、実験動物と薬品その他の消耗品に充てる予定であるが、弁膜症モデルや心筋梗塞モデルの作成に人工呼吸下の手術操作が必要になることから小動物用の人工呼吸器の購入にも充てる。
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