研究課題/領域番号 |
24590489
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
柴崎 晶彦 岩手医科大学, 医学部, 助教 (20445109)
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研究分担者 |
前沢 千早 岩手医科大学, 医学部, 教授 (10326647)
赤坂 俊英 岩手医科大学, 医学部, 教授 (30137525)
杉山 徹 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40162903)
柏葉 匡寛 岩手医科大学, 医学部, 講師 (80326660)
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キーワード | lincRNA / 抗酸化関連分子 / 腫瘍化 |
研究概要 |
エピジェネティックによる遺伝子発現制御には、DNAに結合して近傍クロマチンの修飾状態を制御する数多くのたんぱく質が関与しており、古くからタンパク質間相互作用でクロマチン制御複合体を形成することが知られていた。しかし近年、ポリコーム複合体などの抑制因子がリクルートする新たな機構として、非翻訳RNAの一種lincRNAsが足場として関与することが明らかとなった。現在、lincRNAは約8,000種類存在することが知られているが、linc RNAの機能と標的遺伝子が明らかになっているものは僅かである。既知lincRNAのうち、X染色体の不活化に関与するXistや、インプリンティングに関与するAir、Kcnq1は、それらが転写された近傍に存在する遺伝子(シス領域)の転写制御に関与している。 我々は上記の背景をもとに、腫瘍としての生物学的特性を獲得・維持する過程で、何らかのlincRNAの発現変化が関与していると考え、次世代シークエンサーを用いlincRNAの網羅的解析を行った。その結果、正常細胞といくつかの腫瘍細胞間で変化が著しい数種類のlincRNAを見出しており、腫瘍特異的なlincRNAの存在を予想している。腫瘍特異的lincRNAを効率的にスクリーニングするため現在までに正常メラノサイト細胞を種々のがん遺伝子で形質転換した細胞株を樹立した。今後、前述の形質転換細胞を用いて造腫瘍性を指標としてクロマチンレベルでの遺伝子発現の解析、さらには腫瘍形質における関与や手術検体を用いた機能的解析を順次行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍化の過程でクロマチンのリプログラミングに関与するlincRNAを効率的にスクリーニングするために形質転換細胞を用いた実験系を構築した。これは正常細胞に既知遺伝子を導入することで腫瘍細胞に形質転換する実験系であり、形質転換前の正常細胞を比較対象に用いることが出来る点が優れている。昨年度は形質転換するための遺伝子群の組み合わせや遺伝子の導入方法を検討した。現在、形質転換細胞の造腫瘍性等の検討を始める段階である。また昨年度までに、卵巣がんではlincRNAの一種であるHOTAIRは、一般にその標的とするHOXD10の制御には関連せず、microRNAであるmiR-10bが主要な制御因子であることを見出した。本結果は、腫瘍の種類によってlincRNAのプロファイルや、その機能が異なる可能性を示唆するものである。さらに、メラノーマ細胞においては、抗酸化系分子の破綻を見出し、lincRNAの関与を解析することも検討している。今後、樹立した形質転換細胞を用いて、腫瘍化に関与するlincRNAのスクリーニングを進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍に関わる因子は腫瘍の種類に特異的である場合が多い。既知lincRNAのうち、現在腫瘍との関連が知られるHOTAIRは乳がんや大腸がんで特に高発現がみられる。我々がこれまでに乳がん細胞株においてスクリーニングした機能が未知なlincRNA群が、他の腫瘍において共通のものか、または特異的なものかを検討する。またこれまでに樹立した形質転換細胞を用い、次世代シークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析を行い、lincRNAの発現差異を各細胞間で比較検討する。それにより各種腫瘍間で特異的なもの、さらには共通なものをスクリーニングし、以降の詳細な解析に賦す。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の一部遅延があり、また長期保存ができない試薬が必要であるため、次年度に購入する必要が生じた。 6月中に購入する予定である。
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