研究課題/領域番号 |
24590490
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
望月 早月 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80365428)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ADAM / VWF / 癌細胞増殖 / 癌転移 / ヒト型抗体 |
研究概要 |
本研究では、ADAM28の癌細胞転移での役割を調べるために、ルシフェラーゼとVenus融合タンパク質を恒常的に発現する癌細胞株(PC-9ffluc-cp156とMDA-MB231ffluc-cp156)を作製し、マウス尾静脈内注入による肺転移モデルと乳房皮下脂肪組織移植による自然転移モデルを用いて検討した。PC-9 ffluc-cp156細胞の肺転移は、shRNAによるADAM28発現抑制により有意に抑制され、マウス血中VWFの分解はmock群に比べてshADAM28群で抑制されていた。MDA-MB231 ffluc-cp156細胞でもADAM28発現抑制で局所での癌細胞の増殖と全身臓器への自然転移が有意に抑制された。 ADAM28が肺癌や乳癌における標的治療候補分子になると考え、ADAM28活性を阻害するヒト型抗体の開発を行った。ファージディスプレイ法を用いたヒト型抗体ライブラリー(Human Combinatorial Antibody Library)をスクリーニングし6種類の候補抗体を得、そのうち2個のクローン(211-14と211-12)はADAM28と特異的に反応することを証明した。211-14抗体はADAM28によるinsulin-like growth factor-binding protein 3 (IGFBP-3)の分解を阻害し、ヒト乳癌細胞株(MDA-MB231細胞)のIGF-I誘導性細胞増殖を抑制した。また、MDA-MB231 ffLuc-cp156細胞を乳房皮下脂肪組織移植し、211-14抗体処理すると局所での癌細胞増殖と転移が有意に抑制され、PC-9 ffLuc-cp156細胞尾静脈内注入後の肺転移も同抗体投与により有意に抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ファージディスプレイ法を用いたヒト型ADAM28抗体のスクリーニングにより、候補抗体として6種類(221-02、221-06、 221-12、 221-14、221-26、221-09)が得られ、そのうち211-12の抗体と211-14抗体が、ADAM28と特異的に結合することをイムノブロット法、免疫沈降法、ビアコアにより証明できた。また、本ヒト型抗体が他のADAM近縁遺伝子ファミリーのMMPs (MMP-1、2、3、7、9、13)やADAMs(ADAM9、10、12、15、17)、 ADAMTS4、ADAMTS5との交差反応しないことも明らかとなった。さらに、本抗体がin vitroでIGFBP-3の分解や乳癌細胞増殖を抑制することも明らかとなり、当初の実験計画どおりの結果であり、順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、得られたヒト型ADAM28抗体(211-14)がマウスの転移モデルや増殖自然転移モデルを用いて癌細胞も増殖・転移を抑制するのかどうか検討する。また、癌細胞を移植後数週間で腫瘍を切除し、ヒト型ADAM28抗体が治療後の転移を防げるのかを詳細に検討する。さらに、本抗体がADAM28分子標的治療薬剤として応用できるための基礎的研究として、正常組織におけるADAM28発現局在の検討と機能解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度もマウスを用いた転移モデルや増殖自然転移モデルの実験が中心となるため、マウスの購入費と飼育費を申請する。また、正常組織におけるADAM28の発現解析のため試薬費と抗体購入費を申請する。これまでに得られた研究成果をGordon Research Conference on MMP(イタリア)で発表する予定であり、旅費を申請する。
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