研究課題/領域番号 |
24590490
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
望月 早月 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80365428)
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キーワード | ADAM / 分子標的治療 / 癌転移 |
研究概要 |
ADAM28 (a disintegrin and metalloproteinase 28)はヒト非小細胞肺癌で癌細胞特異的に高発現し、癌細胞の増殖・転移に重要な役割を果たすことを明らかにするとともに、肺癌治療を目指してHuman Combinatorial Antibody Libraryからヒト型抗ADAM28抗体(211-14)を開発した。211-14抗体は、分泌型ADAM28に特異的なアミノ酸配列を認識し、ADAM28のIGFBP-3分解活性を1:1のモル比で阻害した。同抗体を用いた免疫細胞化学染色の結果、分泌型ADAM28は主として細胞膜上に局在し、ADAM28の細胞膜上でのアンカリングシステムの存在が推定された。211-14抗体は、ADAM28高発現ヒト肺腺癌細胞株(PC-9)のinsulin-like growth factor-I誘導性細胞増殖と運動・浸潤能を濃度依存的に抑制した。LuciferaseとVenus融合遺伝子を導入したPC-9 ffLuc-cp156を作製し、マウス尾静脈内注入による肺転移モデルで本抗体の作用を検討した。PC-9 ffLuc-cp156細胞尾静脈内注入翌日から腹腔内へ211-14抗体を投与した結果、肺転移は有意に抑制され、生存率の著しい改善とともに10匹中3匹では腫瘍の完全消失がみられた。また、PC-9 ffLuc-cp156細胞尾静脈内注入3週後に抗体治療を開始した実験では、全身転移の有意な遅延がみられ、平均生存期間が11週間延長した(コントロールIgG投与群:211-14抗体投与群=17週:28週)。ヒト型抗ADAM28抗体211-14は、ADAM28活性阻害によりヒト肺癌細胞の増殖・転移を抑制し、ADAM28分子標的治療薬剤としての応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により、ADAM28活性を阻害するヒト型抗体をHuman Combinatorial Antibody Libraryよりスクリーニングし、性質の異なる2種類のADAM28特異的完全ヒト型抗体 (211-12と211-14)を獲得している。。211-14抗体は分泌型ADAM28に特異的であり、211-12抗体は分泌型および膜型ADAM28の共通領域における3次構造を認識する。221-14抗体を用いた予備実験から、分泌型ADAM28は主に細胞膜上に局在することを認めており、ADAM28の細胞膜上でのアンカリングシステムの存在を見出している。以上の結果をまとめて現在論文を作成中であり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究により開発したヒト型ADAM28抗体(211-14)が癌細胞の増殖・転移を抑制する詳細な分子メカニズムについて検討する必要がある。また、本抗体を用いた実験で分泌型ADAM28は細胞膜上になんらかの分子にトラッピングされている可能性があることから、細胞膜上でのADAM28の活性制御メカニズムについても検討する。
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