研究課題/領域番号 |
24590493
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
辻内 俊文 近畿大学, 理工学部, 教授 (10254492)
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研究分担者 |
朴木 寛弥 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (40336863)
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キーワード | LPA / LPA受容体 / 細胞運動能 / 浸潤・転移 / 抗がん剤耐性 / がん培養細胞 |
研究概要 |
今年度は、抗がん剤であるシスプラチン(CDDP)とドキソルビシン(DOX)を長期間にわたり低濃度から高濃度に徐々に濃度を上げてがん細胞に処理することで、抗がん剤耐性細胞を樹立し、細胞機能解析ならびにリゾフォスファチジン酸(LPA)受容体遺伝子発現解析を行った。その結果、無処理のがん細胞に比して抗がん剤耐性細胞では各LPA受容体遺伝子発現が有意に変化し、細胞の種類により発現パターンが異なることが判明した。また、CDDP・DOX・タモキシフェン(TAM)を短期間、細胞に処理した場合においても各LPA受容体遺伝子発現が変化し、用いた抗がん剤の種類により異なる遺伝子発現を変化させることがわかった。さらに、いまだがん細胞において機能が不明であったLPA5について、種々のがん細胞より遺伝子導入法を用いて遺伝子発現改変細胞を樹立し、それら細胞を用いて細胞運動・浸潤能、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)発現・活性化、血管新生への関与を検索し、LPA5ががん細胞の悪性増殖能に抑制的に作用することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗がん剤耐性がん細胞は、長期間抗がん剤を処理して作成するという単純ながら根気のいる作業であったが、今年度までに膵・肺がん・骨肉腫など各種抗がん剤耐性がん細胞を樹立することができた。また、当初の実験計画通りに、無処理の細胞に比して抗がん剤耐性がん細胞では各LPA受容体遺伝子発現が誘導されることも判明し、さらにがん細胞の増悪化におけるLPAシグナル伝達経路の関与が強く示唆されることとなった。また、新たにLPA5発現改変細胞を作成し細胞機能解析を行うことでがん細胞における他のLPA受容体の細胞機能を明らかにすることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
抗がん剤耐性細胞において発現しているLPA受容体に対するノックダウン細胞を作成し、抗がん剤に対する生存率の変化を観察する。また、LPA受容体のうち、がん細胞の悪性増殖能にかかわるLPA4とLPA6の機能がほとんど不明であるため、これらの遺伝子ノックダウン細胞を膵・肺がん細胞および肉腫細胞を用いて作成し、運動・浸潤能、転移能や抗がん剤耐性における細胞機能解析を行うとともに、各LPA受容体間での相互作用を、LPAシグナル阻害剤を用いて検索する。さらに、作成した遺伝子発現改変細胞を用いた動物実験も行う予定である。
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