研究実績の概要 |
カハールの介在細胞(ICC)および平滑筋細胞のcDNAライブラリーを差分化法により解析し、ICCに特異的に発現する複数の分子を発見した。その中で、免疫グロブリンスーパーファミリー細胞接着分子の一つであり、神経のシナプス形成に関与するCADM1に注目し検討を行った。免疫染色、in situ ハイブリダイゼーション法により、CADM1が実際にICCに発現していることを確認し、CADM1がICCと神経や平滑筋細胞との接着に重要な役割をしていることを明らかにした。さらに、CADM1は非小細胞肺癌などの腫瘍発生に関与していることより、ICCのcounterpartである消化管間葉系腫瘍(GISTs)における発現を調べたところ、ほとんどの小腸GISTsにCADM1が発現しているのに対して、胃GISTsでは、その発現が稀であることがわかった。つまり、GISTsの発生メカニズムは臓器により異なる可能性がある。以上の結果を投稿準備中である。 並行して、GISTsの研究を進めた。我々は、c-kit遺伝子の新しいタイプの変異(exon9、codon501 Ser,codon502 Alaの重複変異)を見つけ、この変異がc-kit遺伝子産物(KIT)の恒常的な活性化を引き起こし、GISTsの腫瘍発生に関与していると共に、この変異KITはKITインヒビターである(imatinib,nilotinib)ことにより、抑制されやすいことを明らかにした。さらに新たに報告されたc-kit遺伝exon8の変異について解析を行った。1000例の散発性GISTs中、3例にexon8の変異を見つけた(codon 419欠失タイプと codon417~419置換タイプの2種)。Exon8に変異を持つGISTsはいづれもmitosisが多くみられ病理組織学的悪性度が高く、臨床的にも転移がみられた。これらのc-kit変異を有する症例に、imatinibを投与したところ、臨床的に高い抗腫瘍効果がみられた。
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