研究課題/領域番号 |
24590495
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
鍋島 一樹 福岡大学, 医学部, 教授 (40189189)
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研究分担者 |
古賀 佳織 福岡大学, 医学部, 助教 (40572433)
青木 光希子 福岡大学, 医学部, 助教 (80469379)
濱崎 慎 福岡大学, 医学部, 講師 (90412600)
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キーワード | 簇出型浸潤 / miRNA / microdissection / 肺癌 / Micropapillary pattern / tumor budding / sprouting |
研究概要 |
この研究の目的は癌組織標本の簇出型浸潤部と非簇出型浸潤部より、microdissection (MD)にてRNAを抽出し、miRNA arrayを施行して簇出型浸潤関連miRNAを解析することである。25年度は大きく以下の2つの検討を行った。1)肺癌における簇出型浸潤例である微小乳頭状構造(MPP)を示す腺癌組織2例とMPPを伴わない腺癌組織2例を用いてMDを行い、miRNA arrayを施行した。2)肺腺癌におけるMPPおよびsmall cluster invasionと同様に、大腸癌先進部におけるtumor budding/sprouting (TB)部においても、c-METリン酸化が重要な役割を果たしているかについて検討を行った。 第1の課題については、次項目に記載のごとく若干の遅延はあったが、MPP陽性肺腺癌2症例vs陰性肺腺癌2症例のmiRNA arrayが済み、Venn Diagram解析のすべての組み合わせで3倍以上up-regulateしたもの(12プローブ)、2.5倍以上down-regulateしたもの(12プローブ)、およびVolcano Plotによる解析にて有意に (P<0.05, 2倍以上のup/down) up-regulateまたはdown-regulateしたもの(それぞれ11プローブ、7プローブ)を主として解析続行中である。 第2の課題については、大腸癌139例において、低TB群と比較して、高TB群では浸潤先端部において有意にc-METの発現とリン酸化が亢進しており、c-METリン酸化の高い群では無再発生存が有意に短くなっていた。先に明らかにしたMPP陽性肺腺癌におけるc-METの発現とリン酸化の亢進と同様の結果であり、簇出型浸潤部においてHGF-c-MET系を介した共通の機構が存在すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記載のとおり、共同機器センターにおけるmicrodissection機器の更新により、前年度に行ったmicrodissectionからRNA抽出およびmiRNA arrayまでの過程の条件設定を再度行わねばならなかったこと、新規導入機器の不具合によって多少の遅滞が生じた。しかし既にmiRNA array までは施行され、その解析に移っているので、目的とする簇出型浸潤関連miRNAの同定には至れると考えている。また昨年度の臨床病理学的解析の成果として、簇出型浸潤において、大腸癌でも肺腺癌と同様にc-METの発現とリン酸化の亢進が関与することを確認ができた意味は大きく、上記の簇出型浸潤関連miRNAの同定、絞り込みを大いに助ける。今後は当初の計画通りに進行する予定であるが、その基盤が十分にできた昨年度であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初より平成25年度以降の計画として、24年度のmiRNAの解析と選定が完成していない場合には、それを継続しながら、in vitro実験系での準備、臨床病理学的事項との関連に関する統計学的に解析に取り組むと、予備的時間を予定していたので、ほぼその計画に従うことになるが、最終年度なので多少急ぐことが求められる。簇出型浸潤関連miRNAの同定をより正確なものとするため、さらに2症例のMPP陰性浸潤癌(腺癌)のmiRNA arrayを施行すると同時に、現在のデータからの解析を進め、簇出型浸潤関連miRNAをスクリーニングし、選定する。このスクリーニングと選定にあたっては、data bankから拾い上げた抑制対象分子も参考とする。選択されたmiRNAの発現確認はReal-time RT-PCR法にて行い、抑制対象分子に関しても実際の腫瘍組織での発現の確認をReal-time RT-PCR法および免疫組織化学にて行う。
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