研究課題/領域番号 |
24590499
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
宮城 洋平 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), がん分子病態学部, 部長 (00254194)
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研究分担者 |
小井詰 史朗 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), がん分子病態学部, 主任研究員 (60416063)
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キーワード | 肝細胞癌 / 血栓塞栓 / TFPI / tissue factor / 血液凝固第7因子 |
研究概要 |
当初の計画通り,平成25年度はTFPI mRNAを標的として分解するshRNAがドキシサイクリンで誘導されるHuH7肝癌細胞を作製し,この細胞を免疫不全マウスに移植して作製した腫瘍片がドキシサイクリン投与でTFPI発現をノックダウン(KO)した際に示す変化の解析を試みた.まず,予定のドキシサイクリンで遺伝子発現が誘導される,いわゆるTet-Onシステムのプラスミド発現ベクターで複数のconstructをトライしたが,in vitroで効率よくTFPI発現をKOできなかった.そこでレンチウイルス(複製能を無くしたHIVウイルス)からshRNAに相当するmiRNAを発現する系に移行した.ドキシサイクリンで発現誘導される赤色蛍光タンパク質(RFP)mRNAの3’-UTRからTFPI mRNAを標的とするmiRNAが産生されるシステムで,2つのmiRNA constructの予備実験で,ドキシサイクリンでRFPが誘導されTFPIタンパク量が減弱することがHuH細胞で確認出来た.現在,レンチウイルス産生の準備を進めている. この間,並行して肝癌細胞で,本来,血管内皮細胞を中心に発現するTFPIが異所性に高発現するメカニズムの解析を進めて,男性ホルモンに関連する核内受容体と,この受容体と協調して働く複数の遺伝子の転写制御に関わるタンパク質群が,この異所性発現に深く関わることを実際の外科切除肝細胞癌組織での免疫染色解析で明らかにすることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に述べたとおり,既にプラスミド発現ベクターの作製を済ませて準備していたドキシサイクリン誘導性のTFPI-KOシステムが予定通りに稼働しなかったために,この点に関しては,やや予定よりも研究の進捗が遅れている.しかし,代わりとなるレンチウイルスを用いた系が充分に機能することを,細胞レベルで平成25年度内に確認することができている.また,肝癌細胞でTFPIが異所性に高発現するメカニズムの解析を並行して進めた結果,異所性発現に関わる具体的な転写制御関連タンパク質を複数同定することが出来たので,TFPI-KOシステムの遅れを補う結果となっている.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は本研究計画の最終年度であるが,in vitroで機能することを確認したレンチウイルスTFPI-KOシステムを用いて,可及的速やかに,HuH7細胞,TFを高発現させたHepG2細胞(既に作製済み)を親株に,ドキシサイクリンでTFPI発現が減弱する肝がん細胞を作り,免疫不全マウスでの移植実験を開始する.TFPI-KOで移植肝がん腫瘍片が血栓床を保持できなくなり,血栓形成,腫瘍縮小が起こることを確認する. 外科切除肝細胞癌組織の免疫染色で異所性TFPI発現との関連が示された因子については,HuH7, HepG2,2つの培養肝がん細胞で,遺伝子高発現やsiRNAによる発現KOの実験系を用いて,in vitroの実験で関連を確かめる.時間の余裕があればTFPI遺伝子の発現調節領域(promoter)の解析まで実施して,年度内に英文科学誌に論文を投稿する. 本研究期間内で,TFPIを標的にして肝癌組織に血栓を形成させ腫瘍を縮小させることができる事が立証できれば,今後は肝がん細胞を用いたTFPI inhibitorのscreeningを実施してtranslational researchを展開したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
進捗状況に述べたように,予定していた遺伝子発現抑制細胞を用いたin vitro,in vivo実験の一部を平成26年度に実施することになったため,その実験遂行に必要な物品費を次年度に繰り越した. レンチウイルス産生に必要な遺伝子導入,細胞培養関連の物品費,及び,免疫不全マウスの購入飼育,ゼノグラフトの形態学的,分子生物学的解析のための物品費として使用する.
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