研究課題/領域番号 |
24590499
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
宮城 洋平 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), がん分子病態学部, 総括部長 (00254194)
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研究分担者 |
小井詰 史朗 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (60416063)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 組織因子 / TF / TFPI / fVII / 肝がん |
研究実績の概要 |
肝細胞がビタミンK依存的に生理的に産生する血液凝固第VII 因子(fVII)は,種々の細胞の膜表面上に発現する組織因子(tissue factor: TF)と複合体を形成し,外因系の血液凝固反応(TF-fVII経路)を開始する.申請者らは,発生母地の肝細胞と同様に大量のfVIIを産生する肝がん細胞が,TFを同時に発現するにもかかわらず血液凝固反応を惹起しないという逆説的な現象を培養細胞レベルで見出た.がんの発生,進展,転移に関わる血管新生/脈管新生の研究が国内外で精力的に進められる一方で,がん組織が,誘導した血管に血栓形成等を起こさずに血流の疎通性を保つメカニズムの研究は乏しい.肝がんをモデルとしたこの分野の研究が,がんの新規治療法開発の標的となると考え本研究を進めている. 本研究を通じて,肝がん細胞がTF-fVII経路の血液凝固を惹起しない原因物質として,通常は,血管内皮細胞が産生する凝固抑制因子:tissue factor pathway inhibitor (TFPI)-1を異所性に産生すること,TFPI-1の発現を抑制すると,培養細胞レベルで血液凝固反応が惹起されること,マウスでの肝がん細胞の腫瘍形成が損なわれること,腫瘍形成の後にTFPI-1発現を抑制すると腫瘍組織に壊死が起こることを明らかにした.肝がん細胞における異所性TFPI-1発現の分子メカニズムについては充分に迫ることができなかったが,「がん組織が血液凝固を回避して血管の疎通性を積極的に確保するメカニズム」が存在し,これが,がんの増殖,進展などの生物学的特徴に関わり,また,逆に有用ながん治療の分子標的となる可能性を示すことができた.TFPI-1抗体やfVII inhibitor等による新規肝がん治療法の開発を検討している.
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