研究課題/領域番号 |
24590500
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所) |
研究代表者 |
赤澤 隆 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, 主任研究員 (80359299)
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キーワード | 癌 / 免疫学 / 薬学 / アジュバント / ワクチン / リポペプチド / TLR / 腫瘍免疫 |
研究概要 |
抗がんアジュバントの人工設計戦略「アジュバント・エンジニアリング」によって、これまでに5つの候補化合物(A/B/C/CL/D)が得られている。本申請課題においては、化合物B(樹状細胞標的化能を持つリポペプチド)を中心に、化合物C/CL(集合体形成能を持つリポペプチド)および化合物D(がん細胞修飾能を持つリポペプチド)の性質・有効性を検証して、開発を進める計画であった。 昨年度までに、樹状細胞標的化リポペプチド(化合物B)は投与部位における皮膚炎症(副作用)を回避可能な新規アジュバント候補化合物として国際特許PCT出願を行った。本年度はこの作用メカニズムについて、データの再検証を重点的に行い、化合物の皮膚残留性と応答細胞選択性の2面から、副作用回避が可能となることを明らかにした。この内容は、INTERNATIONAL JOURNAL OF CANCERに投稿して受理され、掲載が確定している。 また、化合物C/CLについては、これまでのデータを再検証した結果、やはり興味深いin vitroの応答を示すものの、マウスin vivo抗腫瘍効果については、十分な有効性の増強が認められなかった。現在までに、アジュバントとしての有用性を見いだせないため、本申請内での継続開発を断念した。 一方、化合物Dで修飾処理した不活化がん細胞を抗原を含むワクチンとして利用した場合、既知のものと同等以上の抗がん効果を認めるが、抗原にペプチドを用いた場合、化合物Dの有効性は減弱されていた。用途は限定されるものの、実際の治療やワクチ調製操作を考えた場合、化合物Dは有用な薬剤になり得ると判断した。今後、化合物Dに修飾化されたがん細胞を用いた詳細解析を進める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化合物B(樹状細胞標的化リポペプチド)について、がん治療における有用性と、投与部位における皮膚局所炎症(副作用)の回避性について、国際特許出願し、そのメカニズムを解析した結果を含めて論文発表を行った。本年度より光学異性体に関する評価を計画していたが、一時中止し、次年度計画予定であった体内動態の検討を進めた(この結果は論文報告の中に含まれている)。当初の全計画項目においては、他の動物細胞の応答と立体異性体の活性について検討を残すのみとなり、相対的に当初の計画通り進んでいると言える。 化合物C/CLについては検討の結果、現状ではアジュバント候補になり得ない(さらなる応用改良が必要)と判断し、一通りの評価を終了した。 一方、化合物Dは、他の化合物とは異なるワクチンへの応用利用によって、アジュバントとしての有用性が期待され、使用方法・条件検討を進めている(がん抗原が不明ながん患者さんに対しても、化合物D処理によって、摘出したがん細胞を効率的に応用することが可能)。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は主として、化合物D(化合物Dで修飾したがん細胞)と樹状細胞との反応性、CTL誘導能について詳細解析を進める。また、動物実験における抗がん効果は既に評価済みであるが、他化合物との活性比較、抗原利用法の再検討などを行い、新しいワクチンの開発ツールとして成果発表を目指す。 化合物Bについては、今後の臨床研究等を見据えて、不安材料を一つずつ検討していく。基本構造としたPam2Cys構造には光学異性体が存在するため、それぞれの合成・入手方法を再検討する。入手できた場合、有効性と副作用について詳細検討し、臨床応用に使用すべき化合物形体を確定する。また、企業連携を目指した活動を進めていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画において主要開発化合物Bの特許出願および論文発表を優先させたため、一部の評価系の実施及び必要な試薬の購入(物品費の使用)を次年度に行う事になった。 本年度に計画していた評価系の未実施分は、次年度に合わせて実施する予定であり、研究費における物品費を増額する計画である。 (物品費:650,000→970,000,旅費:150,000,人件費・謝金:100,000,その他:100,000,合計1,320,000)
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