研究課題/領域番号 |
24590500
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所) |
研究代表者 |
赤澤 隆 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, 主任研究員 (80359299)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌 / 免疫学 / 薬学 / アジュバント / ワクチン / リポペプチド / Toll-like receptor / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
申請者がこれまでに発展させてきたアジュバント・エンジニアリング・プロジェクトより、抗がん免疫アジュバントとして有望な5候補化合物が得られていた(化合物A/B/C/CL/D)。化合物Aについては既に公表済みであり、本課題ではB/C/CL/Dについて重点的に検討する計画であった。昨年度までの検討から、in vitroの評価系において興味深い活性を示していた化合物C/CLはin vivo抗がん免疫アジュバント活性において十分な有用性を示さないことが明らかとなった。このため化合物C/CLの研究開発を中断し、化合物B/Dに注力することとなった。 化合物Bは既報の人工リポペプチドであるP2C-SKKKKと比較して、より強力な抗がん免疫効果を発揮し、かつ、ワクチン投与部位の皮膚の過剰炎症(副作用)を回避可能な理想的アジュバントとして働く。本年度、化合物Bの抗がん免疫アジュバントとしての有効性と体内動態を含めた作用メカニズムの詳細解析が論文に掲載された(International Journal of Cnacer. 135(12): 2847-56. 2014)。この化合物Bについては企業提携が成立し、これまでには不可能だった化学構造上の改良や解析が可能となり、実用化に向けた研究を開始する運びとなった。また、化合物Bをベースとした新しい改良設計案を見出したため、その評価系の検討を優先的・重点的に検討してきた。 一方、本年度は化合物Bの研究開発が予想以上に発展したため、個別化がんワクチン調製に有用な がん細胞修飾化ツール(化合物D)については十分な検討ができなかった。しかしながら、化合物Dの基礎データも整いつつあるため、1年間の研究期間の延長を申請し、論文投稿を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では化合物B/C/CL/Dに関する詳細検討・特許申請・論文投稿を計画しており、本年度が当初計画3年の最終年度であった。 化合物Bに関する検討は、論文公表・特許出願・企業提携を含めた実用化研究も加速しており、当初の想定・計画以上に研究が進展したと考えている。一方で、化合物C/CLについては、期待していたほどのin vivoの抗がん効果・有効性を認めなかったために中断した。また、化合物Dに関する検討は、化合物Bに注力したために遅れ気味であり、1年間の研究期間の延長申請をして、論文投稿までを完了する計画である。 それぞれの化合物に関する成果については一長一短はあるが、申請課題全体としては順調に進んだと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
アジュバント・エンジニアリング・プロジェクトとしては、今後も新規人工設計および改良設計を行い、より強力で有用性の高いアジュバント化合物の開発を進める。 化合物Bについては実用化研究・改良開発を企業提携により加速させていく計画である。また、化合物Dは患者さん由来のがん細胞を抗原の供給源として、擬似的に細菌由来の成分で修飾して、ワクチン化するためのツールである。本課題としては化合物Dについての論文までを発表して完結したい。 現在、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体など、免疫抑制の解除を目的とした免疫チェックポイント阻害剤が目覚しい発展を遂げ、臨床開発が進められている。これらの治療法には抗原やアジュバントによる免疫活性化をベースとした治療法が相乗的に働く期待が持たれている。申請者のプロジェクトから得られたアジュバントの治療効果についても、これらの様々な治療法との併用を含めて検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題は、オリジナル化合物(B,C,D)を基に新規抗がん免疫アジュバントを改良開発するものである。当初の計画では、最終年度は化合物Dの解析と論文発表を進める計画であったが、本課題を発展しうる化合物改良のアイデアが見出されたため、この新規改良法を優先的に検討する計画へと変更した。この結果、化合物Bの研究は当初の目標以上に発展したが、化合物Dに関する研究は次年度に期間を延長することになり、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
化合物Dに関する一部の追加実験と論文投稿準備を継続し、次年度中の学会発表と論文公表を計画している。次年度使用額はこれらにかかる経費(試薬代・英文校正・論文投稿料・学会発表(国内旅費)にあてる計画である。
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