研究課題
マラリアは世界最大の原虫感染症で、その制圧に向けたマラリア生物学の新しい展開が待たれている。ゲノム情報と逆遺伝学的手法により、これまでワクチン候補分子や新規抗マラリア薬の標的分子が同定されているが、既存研究手法の限界も見えており、さらなる新規な研究手法の誕生が待たれている。本研究の目的は、マラリアミューテーター(超高頻度変異発生型マラリア原虫)をマラリア生物学研究のイノベーションツールとして開発することである。DNAをポリメラーゼデルタの校正機能に必須なアミノ酸2箇所をアラニンに置換した変異型遺伝子断片を調製し、これを野生型原虫内の当該遺伝子と置換した組み換え原虫を作成した。この組み換えネズミマラリア原虫を一週間に一度、122週間にわたりマウスに継代感染を繰り返した。継代に伴いゲノム内に突然変異が蓄積していることを確認するため、122週間に至るまでの途中の原虫集団から任意のクローンを選択し、その全ゲノムを超高速シークエンサーによりリシークエンシングと変異解析を行った結果、コントロール原虫と比較して約80倍以上の突然変異率を示していることを確認した。さらに、マウスを介した継代感染を122週間行って得た原虫集団は生殖母体形成能を欠損していることも突き止めた。これらの結果は国際雑誌DNA Researchに掲載された。この成果を群馬大学のホームページ上において発表した。また読売新聞、上毛新聞にも報道された。
3: やや遅れている
ネズミマラリア原虫のミューテーターの作成に成功し、国際誌に掲載された。しかし研究計画によれば、ネズミマラリア原虫ミューテーターから薬剤耐性原虫を単離することになっている。実際に薬剤耐性原虫の単離には成功しているが、次世代シークエンサーを外注したところ、データを得るのに3ヶ月近く時間を要したことから、得たデータをまとめて論文化することが遅れている。また、これに伴い熱帯熱マラリア原虫のミューテーター作成も研究計画に入っているが、ネズミマラリア原虫の作成と論文化が遅れていたことから全体の計画が少し遅れた。
まずネズミマラリア原虫から単離した薬剤耐性原虫の変異解析結果をまとめて論文化を急ぐ。次に熱帯熱マラリア原虫のミューテーターについては、すでに着手しており年度内にその完成を目指す。
ネズミマラリア原虫のミューテーター作成において、外注で次世代シーケンサーによるリシーケンシングを行ったが、その納期が遅延したため研究全体のスケジュールが遅れている。ただ、ネズミマラリア原虫のミューテーター作成という目標は完了し、論文発表を行った。一方、研究スケジュールがずれ込んだため、熱帯熱マラリア原虫ミューテーターを作成する実験が先延ばしになり、その結果、平成25年度に行うべき当該実験計画を遂行できなかったため、次年度使用額が生じた。先行研究で行ったネズミマラリア原虫ミューテーター作成に成功したことを踏まえ、平成26年度には熱帯熱マラリア原虫ミューテーター作成に着手する。そのために前年度に使用予定だった研究費を用いて前年度の研究計画を遂行すると同時に、今年度に行うべき研究計画も遂行する。ネズミマラリア原虫作成時に用いたアプローチがそのまま適用できる可能性が高いため、研究目標を達成できる見込みは高い。
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DNA Research
巻: 未定 ページ: 未定
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http://www.gunma-u.ac.jp/sb/sb.cgi?eid=829