研究課題
ネズミマラリア原虫のDNA Polymerase deltaの校正機能に必須なアミノ酸2箇所をアラニンに置換した変異型遺伝子断片を作成した。次に野生型原虫において当該遺伝子を変異型遺伝子で置換した組換え原虫を作成した。この組換え原虫では(以下、ミューテーター)DNAの複製時に生じる変異が修正されることなくゲノムに蓄積し、いわゆる突然変異ライブラリーがマウス個体レベルで構築できることが期待できる。このことを検証するため以下の実験をおこなった。ミューテーターをマウスに接種して一週間飼育し、その後に感染マウス血液1000個を新しいマウスへ接種する継代感染を約120週間繰り返しおこなった。継代後の原虫クローン複数個について全ゲノム変異解析をおこなった結果、以下のことを明らかにした。1)ミューテーターは野生型原虫よりも80倍以上変異率を有することを明らかにした。2)継代に伴い生じたナンセンス変異の中にはマラリア原虫性分化を決定する因子が含まれていることを突き止めた。3)変異の偏向を含む詳細な解析をおこなった。これらの結果をまとめて論文として報告した(DNA Research., 2014)。ミューテーターに抗マラリア薬であるサルファ剤およびピペラキンを選択圧として投与したところ、それぞれの薬剤に対して耐性原虫がすみやかに出現した。それぞれの耐性原虫クローンを単離し、全ゲノム変異解析をおこなったところ、薬剤耐性に関わる遺伝子変異を同定することにも成功した。これらの成果については今年度内に論文にまとめて報告する予定である。
3: やや遅れている
ネズミマラリア原虫から薬剤耐性原虫単離に成功している点は計画通りに進んでいると言える。一方、熱帯熱マラリア原虫の作成が難航していることから、区分を「やや遅れている」とした。
熱帯熱マラリア原虫ミューテーターを作成するために用いているのは、通常のdouble crossover相同組換えであるが、これをCAS9/CRISPRによるゲノム編集でミューテーターを作成することに試みる。一方、単離に成功している薬剤耐性ネズミマラリア原虫クローンの変異解析を進め、耐性に関わる原因変異遺伝子同定を世界で初めて同定することに挑戦し、よりインパクトと質の高い研究を進める。
薬剤耐性ネズミマラリア原虫クローンの変異解析を外注するための費用、および熱帯熱マラリア原虫ミューテーター作成に必要なため。
薬剤耐性ネズミマラリア原虫クローンの変異解析の外注費用として100万円、熱帯熱マラリア原虫ミューテーター作成のために75万円を使用する計画である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件)
Trop Med Health
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