研究課題/領域番号 |
24590502
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
嶋田 淳子 群馬大学, 保健学研究科, 教授 (20211964)
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研究分担者 |
畑生 俊光 岡山大学, 農学部, 准教授 (60344917)
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キーワード | トリパノソーマ / オートファジー / 宿主応答 |
研究概要 |
真核生物でオートファジーは病原体排除機構として機能し、オートリソソームによって実行される。Trypanosoma cruzi 感染細胞ではオートファゴソームとその前駆体である隔離膜の形成はされたが、原虫が排除されていないことから、宿主オートファジーが正常に機能していない可能性が考えられた。そこで原虫感染によりオートファゴソーム形成の抑制を解析することを目的として、本研究を行った。 【方法】ヒト繊維肉腫細胞 HT 1080 にT. cruzi を感染させ、48 時間後に固定した。隔離膜のマーカーとして抗 LC 3 抗体、オートファゴソームのマーカーとして抗 syntaxin (Stx) 17 抗体を用いて免疫蛍光染色し、蛍光顕微鏡による画像解析を行った。また感染細胞におけるオートリソソーム形成について解析するため、GFP-RFP-LC 3 B キットを用いて実験を行った。 【結果と考察】非感染細胞をコントロールとし、LC 3 と Stx 17 の蛍光強度を定量、比較したところ、感染細胞では LC 3 の蛍光強度は約2 倍に増加したが Stx 17 はほとんど増加しなかった。Stx 17 は隔離膜には局在せずオートファゴソームのみに局在することから、感染細胞では隔離膜は増加するが、オートファゴソーム形成は抑制されている可能性が示された。またGFP-RFP-LC 3 B キットを用いた場合、感染細胞では LC 3 の輝点が観察されたがオートファゴソームの酸性化はみられず、オートリソソームの形成は認められなかった。以上の結果から感染細胞ではオートファゴソーム形成の過程が抑制され、オートリソソーム形成に至らないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度研究計画書に記載したとおり、原虫感染による宿主オートファジーについて経時的に解析した。その結果、隔離膜は形成されるが、オートファゴソーム形成が抑制されることがわかった。さらに、その分子メカニズムとして、LC3の脂質化が阻害されている可能性が示された。本研究結果は、未だ報告がなく、新しい知見である。研究は順調に進展しており、新たな展開に期待がもてると考える。
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今後の研究の推進方策 |
オートファゴソーム形成抑制について、さらに詳細な分子メカニズムと探究する。この過程には複数のATGタンパク質ファミリーが関与しているため、それぞれの発現およびタンパク質の局在を調べる。そのため、まず、ATG5に着目し、経時的にその発現をリアルタイム定量PCR、ウエスタンブロッティングにより調べ、細胞内における局在変化について詳細に解析する。また、原虫側のオートファジーについても解析する。原虫のATGホモログの1つであるATG8に着目し、その抗体作製を試みるとともに、原虫の発育段階における発現変化およびオートファジーについて解析を行う予定である。
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