研究課題
本年度の研究成果としては、前年度の研究として、住血吸虫に赤血球を加えることで、分泌型小胞と考えられるエクソソームの分泌が増加したことから、更なる詳細な解析を行った。その結果、この分泌型小胞の分泌の増加は次の場合に見られることがわかった。1)住血吸虫が雌雄ペアで生活している場合、2)雌雄ペア・雌単独の場合、赤血球を添加した場合、3)虫体が生存している場合(人工的な熱殺滅処理群と比較して)。これらのことから、住血吸虫は寄生生活において、赤血球を摂取する刺激と、ペアになるという刺激で、特に雌が分泌型小胞を分泌することで、雄とコミュニケーションを取ることで、生殖活動を行っていると考えられた。実際に、赤血球とともに単独培養した雌虫体の表面を透過型電子顕微鏡で観察した結果、外被内に複数のエクソソーム様小胞が確認された。他の生物の細胞等で見られる多胞体等は確認できなかったことから、住血吸虫での分泌型小胞の分泌メカニズムは他の生物と異なることが考えられた。また、本年度は分泌型小胞内のmiRNAについて網羅的な解析をmiRNA-seqを用いて行った。その結果、従来から見つかっていたmiR-Bantam、miR-3479以外にも多くのmiRNAが含まれていることがわかった。今後はこのmiRNAの標的遺伝子をカスケード解析することで、どのような発育時に働くかについて詳細に検討する予定である。研究期間全体を通しての成果としては、日本住血吸虫が分泌型小胞を赤血球の摂取とペアリング時に分泌することを見出した。残念ながら、住血吸虫の分泌システムがたの生物と異なったために、阻害剤等の分泌を抑える機構を確立することができなかったが、今後はRNAi等の方法を駆使して分泌を阻害する方法を確立し、分泌型小胞の機能を明らかにしていく予定である。
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