本研究の目的はマラリア原虫感染赤血球内に構築されるマウレル裂の形成過程を明らかにし、マウレル裂の詳細構造を明らかにすることである。本研究の成果として、まず初年度にマウレル裂関連タンパク質の一つであるPfmc2TMに対して蛍光タンパク質のGFPとエピトープタグを付加し、hrp3あるいはHSP86プロモーターで発現するようにした組換え原虫を作製した。このタンパク質の局在を調べるために生細胞の蛍光顕微鏡観察を行ったが、GFPのシグナルは弱いことがわかった。そこで、GFP及びそれぞれのエピトープタグに対する抗体を用いて免疫染色を行ったところ、マウレル裂マーカータンパク質であるSBP1と共局在していることが確認された。 二年目の年度においてこのタンパク質のより詳細な局在と動態を調べるために、組換え原虫を用いたライブイメージングとこの原虫に付加したエピトープタグに対する免疫電顕解析を行った。ライブイメージングでは付加したGFPのシグナルの強度が改善されず、観察時間が経過するにつれシグナルが消失してしまうため生細胞のライブイメージングは不可能であった。また免疫電顕解析では蛍光顕微鏡観察結果と異なり、それぞれのエピトープタグの局在を検出することはできなかった。そこで、走査型電子顕微鏡を用いて感染赤血球内のマウレル裂の微細構造とその形成過程を調べるために、三次元再構築像を取得するためのOTO法を用いた固定とブロック染色による試料作製を行った。 最終年度において、この試料を用いてマラリア原虫の各発育ステージについて走査型電子顕微鏡による連続断面像の取得と三次元像の再構築を行った。その結果、完全な一つの感染赤血球の三次元像を各発育ステージで得ることができ、それらの三次元解析からマウレル裂やTVNと呼ばれる膜構造は互いに連結した一連の構造体ではなく感染赤血球内で個々に存在することが明らかとなった。
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