研究課題/領域番号 |
24590510
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
林 尚子 獨協医科大学, 医学部, 助教 (50382974)
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研究分担者 |
千種 雄一 獨協医科大学, 医学部, 教授 (20171936)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 住血吸虫症 / 診断法 |
研究概要 |
住血吸虫症の診断法は糞便(尿・組織)からの虫卵の検出が未だにゴールドスタンダードであり、他の従来法の殆ども虫卵に付随する事象に依存している。これらの従来法は、生きている虫体や病害を誘引する虫卵が宿主に存在する「活動性感染」を必ずしも正確に反映するとは限らない。活動性感染を正確に把握出来る新しい診断法の開発は、虫卵産生前の早期診断・治療の実現、本症の重症化の防止や正確な治療判定の実現等に貢献することが期待出来る。住血吸虫の遊離型DNAは主に虫体/虫卵の分泌・代謝物、テグメント等の剥離細胞由来のDNA断片で、宿主の血液・尿・唾液等の体液中に存在する。本研究では遊離型DNAの詳細を究明し、住血吸虫症の活動性感染の診断マーカーとして応用することを目的としている。平成24年度は以下の研究を行った。 フィリピンの日本住血吸虫症有病地に赴き(2か所・計3回)、延べ1583名を対象に住民健診を行い、約800検体の生体材料(血清・尿)を収集した。検体中の遊離型DNAのデータ(一部は現在も解析中)は、腹部超音波所見(研究分担者・千種担当)、血清抗体価、糞便検査所見(フィリピン研究協力者)との比較を行った。遊離型DNAは糞便中の虫卵に比較し検出率が高く、活動性感染を示す新しい診断マーカーとしての有用性を示唆する結果となった。 研究成果の一部は、第82回日本寄生虫学会大会(平成25年3月、東京医科歯科大学湯島キャンパス)、The 12th Annual Workshop of the Regional Network on Asian Schistosomiasis and Other Helminth Zoonosis (RNAS+)(平成24年11月、ベトナム、ハノイ)で発表、後者の詳細はActa Tropicaに掲載予定(掲載号未定)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験動物系での解析は材料の都合上遂行できなかったが、フィリピンの日本住血吸虫症有病地に赴き(2か所・計3回)、約800検体の生体材料(血清・尿)を収集することが出来た。これまでの解析では遊離型DNAは糞便中の虫卵に比較し検出率が高く、活動性感染を示す新しい診断マーカーとしての有用性を示唆する結果が得られた。 研究で得られた知見の一部を寄生虫学会やアジア地域の住血吸虫症研究集会に発表することが出来、特に後者は住血吸虫症の対策担当者・研究者等に研究成果を知ってもらえる点で有意義だったと考える。研究成果の国際誌への掲載は年度内に間に合わなかったが、現在投稿準備中のものも含め次年度には実現する予定である。 以上より、24年度における研究実施は概ね一応の成果が得られたと考えたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後もこれまでのとおり (1)実験動物モデルによる遊離型DNAの動態解析 (2)フィリピンの有病地を中心に住血吸虫症患者の臨床検体の収集・解析 (3)検体の保存法・DNA抽出法の検討 に沿って研究を遂行する予定であるが、特に進行が遅れている(1)実験動物モデルによる遊離型DNAの動態解析に重点を置く予定である。さらに(3)検体の保存法・DNA抽出法の検討に関連し、遊離型DNAの検出感度の向上と(半)定量化を図る目的で、PCR-ELISA法やリアルタイムPCRの検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は主に以下の目的に研究費を使用する予定である。 フィリピン等の住血吸虫症有病地調査のための渡航・滞在費。 検体からのDNA抽出およびPCR等の解析のための試薬・器具類の購入費。 研究成果発表(国際誌への論文投稿)のための諸経費:英文校閲、投稿料等。
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