研究課題/領域番号 |
24590510
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
林 尚子 獨協医科大学, 医学部, 助教 (50382974)
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研究分担者 |
千種 雄一 獨協医科大学, 医学部, 教授 (20171936)
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キーワード | 住血吸虫症 / 診断 / 遊離型DNA / 活動性感染 |
研究概要 |
住血吸虫症の診断は糞便(尿・組織)からの虫卵の検出がゴールドスタンダードであり、その他の従来法も虫卵に付随する事象を捉えている。これらは、宿主の中で生きている虫体や虫卵の存在を示す「活動性感染」を必ずしも正確に反映するものではない。本症の主たる病原は組織中に捕捉された虫卵によって惹起される。その虫卵が産生される前に早期診断・治療を行い、本症の重症化を防止することや正確な治療判定を実現するには、活動性感染を正確に把握出来る新しい診断法の開発が必須である。住血吸虫の遊離型DNAは主に虫体/虫卵の分泌・代謝物、テグメント等の剥離細胞由来のDNA断片で、宿主の血液・尿・唾液等の体液中に存在する。本研究では遊離型DNAの詳細を究明し、住血吸虫症の活動性感染の診断マーカーとして応用することを目的としている。 平成25年度は以下の研究を行った。フィリピンの日本住血吸虫症有病地に赴き(3か所)、延べ140名を対象に住民健診を行い、62検体の生体材料(血清・尿)を収集した。検体中の遊離型DNAのデータは、腹部超音波所見(研究分担者・千種担当)、血清抗体価、糞便検査所見(フィリピン研究協力者)と比較解析中である。また、有病地での多検体解析に対応する目的でPCR-ELISAの系を確立し、半定量的解析が可能となったが、有病国での実施はこれからの課題である。 研究成果の一部は第82回日本寄生虫学会大会(平成26年3月、松山市)、Journal of Clinical Microbiology、獣医寄生虫学会誌で発表した。また、Acta Tropicaに投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
去年度に引き続き、フィリピンの日本住血吸虫症有病地で生体材料を収集することが出来たが、実験動物系での解析は感染が成立せず遂行できなかった。 これまでの高度浸淫地におけるデータから、遊離型DNAは糞便中の虫卵に比較して検出率が高く、特に尿は大量の検体を非侵襲的に採取できることから血液よりも遊離型DNAが検出しやすいことが示唆された。しかしながら、有病地(現場)での応用化には、検体の取扱い・DNA抽出・PCR等の手順の簡便化、コスト面等の問題がある。 25年度における研究実績は、得られた知見の一部を寄生虫学会や国内・国際誌で発表することが出来た点は有意義であり概ね一応の成果が得られたと考えたいが、残された課題も多い。
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今後の研究の推進方策 |
今後も(1)実験動物モデルと(2)住血吸虫症患者の臨床検体による遊離型DNAの動態解析を続行し、(3)有病地で実施可能な検体の取扱い、DNA抽出法や遊離型DNAの検出感度の向上を検討する目的で、リアルタイムPCRやLAMP法を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度(24年度)に購入した紫外可視分光光度計が、申請当初に購入を予定していた物より高性能かつ低価格(キャンペーン)だったため、25年度に繰越金が生じたこと、また、25年度の物品の購入は学内の研究費を優先的に使用したこと、海外調査は時間と費用の節約を図って、1回に集中的に行ったため。 次年度は主に以下の目的に研究費を使用する予定である。 フィリピン等の住血吸虫症有病地調査(検体収集)のための渡航・滞在費。検体からのDNA抽出およびPCR等の解析のための試薬・器具類の購入費。研究成果発表(国際誌への論文投稿)のための諸経費:英文校閲、投稿料等。
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