研究課題/領域番号 |
24590512
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
上田 たかね 帝京大学, 医学部, 助教 (80459312)
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研究分担者 |
斧 康雄 帝京大学, 医学部, 教授 (10177272)
祖母井 庸之 帝京大学, 医学部, 講師 (10311416)
菊地 弘敏 帝京大学, 医学部, 講師 (80338681)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 原虫 / 細胞外ヌクレオチド酵素 / immunomodulator |
研究概要 |
細胞内寄生原虫であるトキソプラズマ(T.g)はマクロファージやその他の細胞内にparasitophorous vacuoleを形成し、その中で宿主免疫機構を回避しながら増殖し、感染細胞を破壊して新たな宿主細胞への感染を繰り返す。傷害をうけた細胞からは細胞質内のATPが漏出し、周囲の細胞は高濃度のATPに暴露されることになる。ATPは炎症亢進因子であるため、生体内では恒常性維持のため、細胞表面に発現しているCD39, CD73が細胞外ヌクレオチド分解酵素として作用し、細胞外ATPを分解している。T.gはマクロファージ以外にも好中球やマスト細胞を刺激してIL-12やTNF-aなどを産生させ、炎症惹起を起こしているが、その一方で原虫自体が有するNTPaseが免疫細胞に及ぼす影響については解明されていない。そのため、この原虫のNTPaseの宿主細胞に及ぼす影響について、この分子がimmunomodulatorとして働く可能性について、培養細胞や末梢血分離好中球などを用い、原虫由来精製NTPaseやリコンビナントNTPaseを用いて解析することを目的とした。原虫由来の精製NTPase量がまだ十分でないため、細胞外ATP暴露による遺伝新発現変化を先行した。好中球様に分化させたHL-60細胞に10mM-100uMのATPを暴露させ、1時間、4時間後における炎症性サイトカイン遺伝子発現をreal-time PCRで解析した所、1-10mMATP暴露においてはTNF-aの遺伝子発現がコントロールの10%以下に抑制されていたが、IL‐6の発現は増強していた。CD39, CD73やADORAなどの膜型受容体の発現量変化について現在解析継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H24年度は年度初めに研究室が新大学棟に移転し、その整理などもあり、やや実験開始が遅くなった。原虫酵素の精製も、原虫培養とある程度多量からの精製となるため、想定より時間を要した。また、年度後半には従来の2倍の講義数の割り当てがあったため、講義準備、試験問題作成などの教育業務などに申請時当初よりも時間が割かれたこと、本研究の前に投稿していた論文の改稿のための追加実験と、論文訂正に数か月を要したため、H24年度内に予定していた実験が遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
予定しているin vitro実験に十分量の原虫からのNTPaseの精製を急ぐ(継続中)と共に、酵素活性部位への変異も含めたリコンビナント酵素の作成を行う。培養マスト細胞株のATP刺激による遺伝子発現解析を行う。 すでにATP刺激した細胞培養上清はあるので、さらに原虫のNTPaseとの共培養上清中のATP濃度などのHPLCでの解析を行う。 またNTPaseの生体内における機能を解析するため、欠損原虫作成のための準備(コンストラクト作成など)を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度に引き続き、消耗品使用がほとんである。細胞培養のためのメデイウム、FACS解析用の抗体や遺伝子発現解析用のプライマー、発現ベクター購入や培養用のプラスチック器具、蛍光顕微鏡観察に使用するカバーガラスなどの購入に内定している1,200,000円中約1,110,000円を充てる予定である。また、学会参加のための旅費として40,000円、論文作成の時の翻訳添削代などに50,000円を予定している。
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