研究実績の概要 |
トキソプラズマは細胞内に寄生し増殖原虫が新たな宿主細胞に感染する際に、破壊された細胞から細胞質内のATPを漏出する。傷害細胞からの高濃度ATPは炎症惹起因子となる。細胞は表面にecto apyraseを発現し細胞外ATPの分解を行い恒常性を維持する。本原虫のNTPaseはApyrase conserved regions と相同性が高く、ATPをADP, AMPへと分解する。本研究では原虫のNTPaseが与える影響を主に炎症性サイトカイン遺伝子発現変化で解析した。0.1mMATPでマスト細胞を刺激後、10分でTNF-aの遺伝子発現が0.8倍と抑制されたがATPとNTPaseが存在した場合には著しく抑制されていた。30分後にはATP刺激およびATP, NTPase添加細胞において、各々1倍0.9倍のTNF-a発現がみられ、細胞外ATPに曝露後の速やかな抑制後に回復することが示唆された。CCL4は、ATP刺激で10分後に0.5倍と抑制されNTPaseも添加した細胞はコントロールと同等であった。30分後には0.5倍に抑制され、NTPaseの存在によりCCL4発現抑制の遅延が示唆された。好中球では0.1mMATPは0.6倍、0.1mMアデノシンは0.5倍にTNF-aの遺伝子発現を抑制していた。NTPase共存ATP刺激好中球では0.8倍に抑制していた。CCL4遺伝子も同様であった。IL-8遺伝子は、ATP刺激は0.7倍に抑制されたが、NTPase共存好中球では1.1倍とコントロールと同等であった。アデノシン受容体AdoRA2Aの発現はATP刺激は約1倍であったが、アデノシン刺激、ATPとNTPase刺激細胞では各々、0.7倍,0.6倍と抑制されていた。以上の結果より、NTPaseは細胞周囲微小環境のATP濃度を減少させ、マスト細胞・好中球などの免疫細胞調節作用をもつことが示された。
|