研究課題/領域番号 |
24590514
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
中野 由美子(斉藤由美子) 国立感染症研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (30321764)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
赤痢アメーバが宿主細胞や細菌を貪食する際には、異なる細胞表面レセプターが貪食の対象を認識することが必要である。しかし、細胞表面レセプターの細胞膜への輸送調節や貪食の対象物の認識機構は殆ど解明されていない。申請者は、ファゴソームに局在する14種の膜輸送因子Rab を手がかりにし、それらの発現抑制株を作製したところ、特定の餌に対して貪食阻害を示すRabがあることを明らかにした。中でも、Rab7B発現抑制株は赤血球の貪食が特異的に低下し、またRab8A発現抑制株は赤血球だけでなくラテックスビーズや大腸菌など複数の対象物の貪食効率が低下した。このことはRab7BとRab8Aが異なる表面分子を輸送していること、また貪食物の認識と取り込みに別々の細胞内輸送機構が貪食を調節していることを示している。さらに、Rab8A発現抑制株と野生型の細胞表面タンパク質の分布を比較したところ、複数の表面タンパク質がRab8A発現抑制株では細胞膜に提示されていないことが分かった。これらのタンパク質は、赤痢アメーバの貪食を調節する新規のレセプターの可能性があり、現在同定を試みている。また、赤痢アメーバでは、リソソームやエンドソームのオルガネラマーカーは確立されているが、小胞体やゴルジ体など輸送の初期段階のマーカーは存在しない。そのため、次年度以降にRab8Aの局在を解析するツールを確立する為に、小胞体マーカーとしてBipと Sec13、ゴルジ体マーカーとしてSed5と GalT1の抗体を作製し、赤痢アメーバで初めて小胞体とゴルジ体の可視化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファゴソームに局在する14種のRabの全ての発現抑制株を作製し、そのうちRab7A, Rab5, RabC1, RabC2は形質転換株が得られず、生育に必須な役割をしていることが分かった。また、作製した発現抑制株について貪食への影響を検討したところ、貪食効率に影響を与えたのはRab7BとRab8Aだけであった。よって、交付申請書に記載した貪食初期に機能するRabのスクリーニングは終了した。それだけでなく、次年度以降にRab8Aの局在解析に必要となる、赤痢アメーバで小胞体とゴルジ体のマーカータンパク質も確立した。
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今後の研究の推進方策 |
複数の対象物の貪食効率が低下したRab8Aの機能解析を中心に進める。まず、Rab8A発現抑制株で細胞表面への提示が低下した表面タンパク質の同定を試みる。細胞表面をビオチン化し、細胞膜を分画することにより、Rab8A発現抑制株で提示が低下している表面タンパク質を質量分析によって同定する。同定した表面タンパク質にタグを付加した形質転換株を作製し、質量解析で同定したタンパク質が細胞膜に輸送されるか、またその発現抑制株を作製すると貪食効率が低下するのかを確認する。またRab8Aの細胞内局在を解析するためにポリクロナール抗体を作製する他、タグ付きタンパク質を発現し、細胞内局在を検討する。Rab8Aの変異型を発現すると前述の細胞表面レセプターの輸送が抑制されるか、また貪食が低下するかを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25 年度に赤痢アメーバの形質転換株の培養維持に労力がかかるため、研究支援者を週2日、1 人雇用するための謝金(7800 円/日 x 8 日 x 12 ヶ月 = 80 万)を計上する。消耗品として培養用試薬、生化学試薬に40万円。国内旅費(日本寄生虫学会での発表)10万、国際アメーバ症会議での発表30万、研究成果投稿料20万計上する。
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