Rab8の局在を解析する目的で、さらなる小胞体ーゴルジ体マーカーを確立するために、小胞体残留シグナルKDEL receptorであるErd2をクローン化し、GFP融合タンパク質として発現する形質転換アメーバ株を作成した。前年度に作成した小胞体内腔シャペロンであるBiP抗体との共染色を行った結果、両者の局在はほぼ一致したほか、シスゴルジに局在する繋留因子SNAREであるSed5ホモログとの共局在は観察されなかった。このことは、Erd2の大量発現がシスゴルジでなくERへの蓄積を引き起こしていることが考えられた。そこで、これまでに確立したERとゴルジマーカーを用いてRab8の詳細な局在を検討した結果、Rab8はBiPと最も高い共局在を示し、広く小胞体に局在すると考えられた。また、ER exit siteマーカーのSec13とは局在が一致せず、COPII小胞には組み込まれないことが示唆された。よって、Rab8が細胞外に輸送する細胞表面レセプターは、COPIIを介していないことが予測できる。Rab8を介する輸送が小胞体からの小胞を介していないなら、今後、Rab8の機能を欠損した変異株が、小胞体ーゴルジ体間の輸送を介するシステインプロテアーゼの輸送には影響を与えないことを確認する必要があるだろう。興味深いことに、ヒトのRab8とRab10はアミノ酸で66%の同一性を示し、同一のRab8 サブファミリーに属している。ヒトRab8はTGNから形質膜への輸送を制御するのに対し、Rab10は小胞体の脂質形成のサブドメインに局在していることが報告されている。おそらく、赤痢アメーバのRab8も小胞体上の脂質形成サブドメインに局在し、脂質代謝の異常がメンブレンラフトに局在する細胞表面レセプターの輸送に影響を与えたと推測している。
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