研究課題
ブドウ球菌エンテロトキシン(SE)は,代表的なスーパー抗原毒素である一方,重要な食中毒原因毒素である.本毒素による食中毒は世界各国で細菌性食中毒の第2位または第3位を占めている.しかし,SEの催吐メカニズムについては,まだ明らかにされていない.本研究者らは,SEAが新たな機能―神経毒作用を示すデーターを得られており,さらにその分子メカニズムを解明するために,SEA及びSEA分子上の嘔吐活性部位を欠損させた複数変異毒素mSEAを作製・精製した.これらSEAとmSEAを用いて,スンクス及び神経培養細胞におけるSEAの神経毒性,嘔吐誘導活性及び毒素の細胞受容体を解析・同定を行った.本年度では,具体的に以下の実験を遂行した.1.SEAの神経毒性と催吐シグナル受容体分子の解析・同定:SEAと結合する神経細胞から結合タンパク質を精製し,Mascot Searchにより受容体タンパクを解析・同定した.さらに,受容体の生化学・生物学的特性を検討し,SEAの神経毒性と特異的な催吐シグナル受容体を解析した.現在,複数な分子が関与していることを示唆されている.2.SEA刺激による神経細胞の分子シグナル伝達経路の解明に関する研究:神経細胞に各濃度のrSEAまたはmSEAを添加し,経時的に細胞をサンプリングし,mRNAを精製し,Real-time PCR,Western blot 及びImmunoprecipitation法を用いて,細胞内NF-κB,IκB,cAMP,iNOS,bNOS等の遺伝子発現を検討した.さらに,神経細胞をRp-cAMP,Bromo-cAMP, 2-APB等の細胞内シグナル伝達の刺激剤と阻害剤をそれぞれ添加・処理し,rSEAとmSEA刺激による細胞内Ca2+,cAMP濃度変化を検討し.Ca2+を介した伝達経路が重要であることを示唆された.今後さらに,SEA刺激による神経毒作用とその分子メカニズムを動物生体内において,組織学的と行動学的(嘔吐反応)の変化について解析し,SEAの神経毒性と催吐分子メカニズムを解明する.
2: おおむね順調に進展している
今年度は,チームワークの努力により,概ね研究計画とおりに進んでいる.また,興味深い新たな現象も発見している.
新年度は,これらの成果と新知見を踏まえ,さらに詳細なシグナル伝達経路と分子メカニズムの解明を進めて行きたい.
当該年度には,研究室にこれまで保管している試薬を優先的に使用したため,新たな試薬の購入を控えていました.研究進展には何ら影響はありません.次年度に,新たな実験内容を計画しているため,それに関連する試薬を購入する予定です.
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