研究課題
市中感染型MRSAは健常人に感染し重篤な病気を引き起こすため、社会上の問題となっている。病院で分離される医療関連MRSAに比べて、市中感染型MRSAは病原性が強いとされているが、そのメカニズムはよくわかっていない。以前我々は、医療関連MRSAが持つ可動遺伝要素SCCmec領域に見出されるが、市中感染型MRSAのSCCmec領域には見出されないpsm-mec遺伝子の転写産物が黄色ブドウ球菌の毒素Phenol Soluble Modulin α (PSMα)の発現を抑制することを見出している。本研究で我々は、psm-mec RNAが毒素PSMαの正の転写因子をコードするagrA遺伝子のmRNAに特異的に結合し、その翻訳を抑制する事を見出した。さらに我々は、疫学的調査を行い、臨床分離されたMRSA 325株のうち、25パーセントの株において、プロモーター部位の変異によりpsm-mec遺伝子の転写が抑制されていること、9パーセントの株においては、psm-mec遺伝子が存在しないことを見出した。これらのpsm-mec遺伝子変異株の多くの株においては、野生型psm-mec遺伝子を有する株に比べて細胞溶解毒素PSMαの産生量が多くなっており、その中の一部は市中感染型MRSA USA300と同等の量のPSMαを産生していた。さらに、野生型psm-mec遺伝子を有するMRSA株からpsm-mec遺伝子を欠損させると、agrA遺伝子の翻訳産物量と細胞溶解毒素PSMαの発現量が増加し、マウスの皮膚感染モデルにおいて病原性が上昇した。以上の結果は、psm-mec遺伝子の転写産物はagrA遺伝子の翻訳抑制を介して、細胞外毒素の発現を抑制し、MRSAの病原性を抑制する機能を有していること、psm-mecの欠損が市中分離型MRSAの高病原性の要因であることを示唆する。
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