研究課題/領域番号 |
24590523
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松浦 基博 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (20150089)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細菌リポ多糖LPS / 自然免疫 / 免疫回避 / 細菌感染 / TLR4 |
研究概要 |
ネズミチフス菌のLPS生合成系を変異させ、アシル基数を減少させる目的で作成した変異株を培養し、得られた菌体からLPSを抽出し、予定通りアシル基数が減少しているかどうか調べた。ガスクロマトグラフィーやMALDI-TOF質量分析によって解析した結果、ほぼ予想通りにアシル基数が減少していることが確認できた。ただ、アシル基数を4個だけのものにまで減少させるのは無理なようで、4個と5個のアシル基が混在する変異株までしか作成できなかった。この菌ではアシル基が4個だけでは細胞壁が弱くなりすぎて、安定した菌体の形成が難しくなる可能性が考えられる。作成した変異株から抽出したLPSでヒトマクロファージ系培養細胞を刺激し炎症性サイトカインの産生を調べた。アシル基数が6~7個の野生型から6個だけのものに変化しても、ヒト細胞刺激活性は強く保持されていたが、野生型からアシル基1個分が減少した6~5個のもの以下5~4個のものでは刺激活性が認められなくなり、反対に刺激作用を抑制するアンタゴニスト活性が認められた。菌体レベルでの反応を見るためにフォルマリン死菌を調整してヒト細胞を刺激すると、アシル基6個までのものは強い刺激活性を示しLPSの場合と同様であったが、6~5個以下のものでは弱いながら刺激活性が認められ、LPSの場合の様なアンタゴニスト活性は認められなかった。弱い刺激活性はLPS以外の菌体成分による作用ではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、目的通りの変異株が作成できているかを確認し、それら変異株から抽出したLPSがヒト系細胞にどの様に作用するかを解析するあたりまでを達成目標にしていたが、LPSの反応だけでなく菌体を用いた反応の解析にまで進むことができた。しかも、アシル基数の減少した変異株では単離したLPSの反応と菌体レベルでの反応に違いが見られるという興味ある結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
サルモネラ変異株の生きた菌をヒト系細胞に感染させた時の反応について調べる。LPS以外にも様々な菌体成分が宿主の自然免疫応答を誘導することが知られている。サルモネラの生菌感染による宿主免疫応答誘導にLPSが果たす役割は他の菌体成分と比べてどの程度の比重を占めるのか、LPSに対する宿主の受容体であるTLR4に対する抗体やアンタゴニストを作用させて調べる。また、LPS以外の菌体成分に対する受容体であるTLR2やTLR9などを抑制した場合にはどの様な影響が出るのかについても合わせて調べ、実際の感染に近い状況下での宿主免疫応答に各々の菌体成分が標的物質としてどの程度利用されているのかについての解析を行う。この時、LPSアシル基の減少した変異株ではどの様な反応が起こるのかについても調べ、この様な変異が宿主自然免疫応答からの菌の回避に実際に貢献している可能性について検討する。 また、サルモネラ以外の菌でも、野生株として高活性型のLPSを持つグループと、低活性型のLPSを持つグループの生菌感染で、LPS活性の差が反映されるのかどうかについても検討を加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(B-A)が71,534円となっているが、年度末の試薬購入などが少しずれこんだことによるものである。基本的には予算のほぼ全額を使っており、十万円以下の額なので翌年度分として請求した助成金にに上乗せしても、使用計画に大きな影響を与える程の額ではないと考えている。
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