研究課題/領域番号 |
24590524
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原 英樹 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30456892)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感染免疫 / 細菌感染 / インフラマソーム |
研究実績の概要 |
インフラマソームは細胞内で種々の微生物由来因子を感知することでカスパーゼ1を活性化し、細胞死の一種であるピロトーシスやIL-1beta、IL-18といったサイトカイン産生を含む多彩な炎症応答を誘導する自然免疫機構である。インフラマソームは受容体分子、アダプター分子ASCおよびカスパーゼ1前駆体から構成されており、現在のところ主な受容体分子としてNLRP3、NLRC4、AIM2が報告されている。昨年度は合成リガンドを用いた研究からNLRP3とAIM2を介したインフラマソーム形成にリン酸化酵素であるSykとJNKが重要であることを報告した。そこで今年度は細菌感染で誘導されるインフラマソーム応答についても同様の機構が働いているのか、リステリア(Listeria monocytogenes)感染モデルを用いて検討を行った。リステリアは主にAIM2インフラマソームを活性化させることを申請者らは以前報告しており、この応答には主要病原因子であるリステリオリシンO(LLO)が関与している。今回の検討から、リステリア感染したマクロファージにおいてLLOがSykおよびJNKのリン酸化を亢進することでインフラマソーム応答を惹起していることが判明した。さらにこの活性に関わるLLOの領域を絞り込んだところ、ドメイン3に位置する1つのアミノ酸に辿り着いた。このアミノ酸に変異を導入するとインフラマソーム応答が低下し、感染マウスにおける菌の病原性が低下した。以上の結果から、リステリア感染においてもインフラマソームはリン酸化酵素による制御を受けており、主要病原因子であるLLOはこれらの細胞内シグナルを介してインフラマソーム応答を亢進することで菌の病原性に関与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初国内にいる欠損マウスを用いて感染実験を行う予定であったが、海外で作製された別の欠損マウスを使用できることになった。予定よりマウスの調整に時間を要するが、このマウスを使用することでより直接的な比較検討が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの調整の関係で感染実験に少し遅延が生じているので延長した平成27年度はこの実験に充てたい。他の実験については予定通り完了している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初JNK欠損マウスを米国ジャクソン研究所から購入予定であったが、東京医科大学で飼育されていた当時未発表だったマウスを共同研究として代用させていただくことができた。そのため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度までに完了予定であったマウス感染実験に遅延が生じており、平成27年度も継続して行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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