病原体や異物を認識するための分子としてToll-like receptor(TLR)やNod-like receptor(NLR)、Aim-like receptor(ALR)などが知られている。TLRとは異なり、NLRやALRは細胞内に発現しており、主に細胞侵入性細菌やウイルスを検知することで下流シグナルを活性化しcaspase-1の活性化を促す。Caspase-1が活性化すると細胞死の一種であるpyroptosisやIL-1、IL-18といったサイトカイン分泌が誘導される。申請者が研究対象としているinflammasomeはこれら細胞内受容体とアダプター分子ASC、caspase-1前駆体から構成されるタンパク複合体であり様々な微生物感染で活性化される。細胞内寄生菌であるListeria monocytogenes(リステリア)は主に細胞内受容体であるNLRP3とAIM2を介してinflammasome応答を惹起すること、また2013年には合成リガンドを用いた研究からASCを介したinflammasome形成にリン酸化酵素であるSykとJNKが重要であることを申請者らは報告した。その後の研究から、リステリア感染においても同様のリン酸化シグナルが活性化されておりinflammasome応答を亢進していること、さらにそのシグナルには主要病原因子が関与していることがわかった。野生型マウスと比較してAIM2やIL-18の欠損マウスでは臓器内菌数が減少することからリステリアは宿主inflammasome応答を活性化することでその病原性を発揮していると考えられる。これらの結果は論文としてまとめている段階である。申請者はもう1つ別のinflammasomeがin vivo感染におけるリステリアの病原性に関与することを示唆する結果を得たので、活性化機構を含め今後検討していく予定である。
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