研究課題/領域番号 |
24590527
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
藤井 重元 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (00325333)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 硫化水素 / オートファジー / 感染防御 |
研究概要 |
近年、システイン代謝に関わる酵素であるシスタチオニン beta-シンターゼ(CBS)やシスタチオニン gamma-リアーゼ(CSE)が生成する硫化水素関連物質が様々な生理機能制御に関わることが分かってきた。本研究では、細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしているオートファジーに焦点をあて、その硫化水素関連物質による制御の分子機構を解析する。本年度は、細胞内で生成する硫化水素関連物質によるオートファジーの抑制メカニズムの解析と、貪食細胞におけるオートファジーによる細菌消化に対する硫化水素の作用の解析を行った。A549ヒト肺がん細胞やRAW264.7マウスマクロファージ細胞では、CBSやCSEのノックダウンによりオートファジーの誘導(LC3-IIの増加、オートファゴソームの増加)が観察された。CBS、CSEをノックダウンした細胞では質量分析により硫化水素関連物質の低下が確認され、これらの細胞に硫化水素ドナー(NaHS)を添加するとオートファジーの誘導は抑制された。また、このようなオートファジーの誘導には低分子量G蛋白質H-Rasの活性化が関与することが示唆された。サルモネラ(Salmonella Typhimurium)を貪食させたRAW264.7細胞では著明なオートファジーの誘導が観察された。硫化水素ドナーで処理をしたRAW264.7細胞では、サルモネラ貪食後のオートファジー誘導が顕著に抑制され、細胞内でのサルモネラの増殖が非処理細胞に比べて有意に増加した。これらのことから、細胞内でCBSやCSEにより生成する硫化水素関連物質がオートファジーの抑制に関わっており、硫化水素は貪食した細菌の消化に影響を与えることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の計画どおり細胞内で生成する硫化水素関連物質によるオートファジーの抑制メカニズムの解析と、貪食細胞におけるオートファジーによる細菌消化に対する硫化水素の作用の解析を行った。おおむね予定どおりの研究成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで順調に研究が進捗している。今後は、当初の計画に基づき、貪食細胞が産生する内因性硫化水素の細胞内殺菌与える影響と、細菌が産生する硫化水素のオートファジーによる細胞内殺菌に及ぼす影響について解析を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、実験に使用する試薬などの物品費が当初の予定よりも少ない額で目的とする研究成果を得ることができた。次年度は、研究進展をさらに促進するために研究試薬等の物品費を使用するとともに、研究成果発表のための学会旅費および論文投稿関連費として研究費を使用する予定である。
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