研究課題/領域番号 |
24590531
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
長谷川 忠男 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10314014)
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研究分担者 |
立野 一郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50311642)
井坂 雅徳 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40336673)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | A群レンサ球菌 / 二成分制御系因子 / 環境ストレス / 遺伝子発現 / 病原性 |
研究概要 |
A群レンサ球菌は咽頭炎、再興感染症である劇症型レンサ球菌感染症など多彩な病態を引き起こす。病態には宿主、細菌両者の要因が関与し、細菌は宿主内の環境、特に細菌に対する防御機構に拮抗する様々な手段を有している。これらの手段を発現させるために、外界環境の変化を感知する機構が重要な役割を果す。感知機構として、二成分制御系センサー蛋白質が存在し、我々はそれらの感知する環境因子、病原性への関与を明らかにしてきた。一方、単独のセンサー蛋白質の関与では説明が困難な環境因子が存在する。そこで本研究では、複数存在するセンサー蛋白質が、いかなる感知機構ネットワークを形成し、機能するかを明らかにすることを目的とした。 1.まず第一に近年分離された劇症型感染症の頻度が高いM1タイプのA群レンサ球菌劇症型感染症患者由来臨床分離株の13種類の二成分制御系をコードする遺伝子配列を明らかにすることを試みた。2010年以降のM1タイプの一部の臨床分離株で、ある一つの二成分制御因子が欠損していることを見出した。この現象は2009年以前の株、M1以外の株では認められず、かつ劇症株で有意に見出されるため、このセンサータンパク質の欠損が病原性を増加させている可能性が示唆される。 2.pHとの関連を明らかにしたSpy1622は直接酸を感知し、かつバイオフィルム形成、バイオフィルム形成に関与する線毛遺伝子発現に影響を及ぼすことを明らかにした。 3.我々がすでに樹立したSpy1622センサー蛋白質ノックアウト株を用いて、他の二成分制御因子ダブルノックアウト株の樹立を試みた。現在、2種類の臨床分離株由来、Spy1622とSpy529、Spy1622とCovSのダブルノックアウト株の樹立に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.24年度実施計画した劇症型、咽頭炎由来A群レンサ球菌の二成分制御因子をコードする遺伝子の塩基配列の比較の実験から全く意図しない新たな知見を得ることができた。 2.pH関連二成分制御センサー蛋白質のこれまでは不明であったさらに詳細な機能も明らかにすることができた。 3.ダブルノックアウト株の樹立に関しても、従来関与が示唆されていたが、結論が確定していないCovSというA群レンサ球菌では最も重要なセンサータンパク質の一つとのダブルノックアウト株の樹立に成功し、今後の詳細な検討が実施できる状況を作り出すことができた。 4.加えて、今年度以降に計画していたpH以外の環境ストレス応答に関しても、一部の二成分制御系因子ノックアウト株を複数の臨床分離株を用いて樹立し、解析を開始することができている。
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今後の研究の推進方策 |
24年度解析した見出した結果をさらに検証するとともに、以下の研究を実施する。 1.pH関連ダブルノックアウト株の更なる樹立と解析―24年度はすでに論文として確立しているSpy1622をもとに、ダブルノックアウトを樹立したが、我々はすでにすべてのセンサー蛋白質をコードする遺伝子のノックアウト株を樹立しているので、Spy337(CovS), Spy529(VicK), Spy1236(CiaH)のそれぞれの組み合わせのダブルノックアウトの樹立を目指す。 2.アミノ酸変異センサー蛋白質導入の野生株に及ぼす影響の解析―正常と考えられるアミノ酸配列を有する野生株に、アミノ酸変異を有するセンサー蛋白質を導入し、異なる2種類のセンサー蛋白質存在下での野生株のpHに対する反応性の影響を検討する。 3.pHとの関連が示唆されていないセンサー蛋白質とSpy1622ダブルノックアウトの樹立―単独でこれまでpHとの関連が示唆されていないセンサー蛋白質においても、ダブルノックアウト株を樹立し、単独では明らかになっていないpHへの関与の有無を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究計画にあった、酸性条件における野生株、単独のセンサー蛋白質ノックアウト株における他のセンサー発現の解析(長谷川、立野実施予定)の検討が遅れたため、繰越金が生じた。繰越金と25年度の研究費の一部を利用して、この解析に充てる予定である。そのほかの25年度の研究費は、研究計画に述べた更なるダブルノックアウト株の樹立とその解析、24年度、見出した知見の詳細な解析に利用予定である。
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