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2013 年度 実施状況報告書

A群レンサ球菌における二成分制御系センサー蛋白質のネットワークの解明に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24590531
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

長谷川 忠男  名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10314014)

研究分担者 立野 一郎  名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50311642)
井坂 雅徳  名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40336673)
キーワードA群レンサ球菌 / 二成分制御系因子 / 環境ストレス / 遺伝子制御 / 病原性
研究概要

A群レンサ球菌は咽頭炎、再興感染症である劇症型レンサ球菌感染症など多彩な病態を引き起こす。細菌は宿主内の環境、特に細菌に対する防御機構に拮抗する様々な手段を有している。これらの手段を発現させるために、外界環境の変化を感知する機構が重要な役割を果す。感知機構として、二成分制御系センサー蛋白質が存在するが、単独のセンサー蛋白質の関与では説明が困難な環境因子も存在する。本研究では、複数存在するセンサー蛋白質が、いかなる感知機構ネットワークを形成し、機能するかを明らかにすることを目的とした。
(1)2010年以降のemm1タイプの一部の臨床分離株で、Spy1910二成分制御因子が欠損していることを見出した。この欠損株は二成分制御系に近接するrestriction modification systemをコードする領域も欠損しており、外来遺伝子の取り込みが容易となり新たな病原因子獲得に有利に働くことが示唆された。
(2)臨床分離株の解析中、一人の患者の複数組織から分離された株の解析を行う機会に恵まれた。血液、髄液、関節液という本来の無菌部位から分離された菌のセンサー蛋白質CovSは、咽頭、痰といった部位から分離された菌のCovSとはアミノ酸が一か所変異していた。発現する蛋白質の違いも認められ、無菌部位への侵入にCovSが大きな役割を果たしていることが確認された。
(3)従来、大気中での培養実験で酸に対して関与が考えられるものとしてYvqE(Spy1622)の検討を行ってきた。5% CO2存在下という異なる培養条件で酸に対する影響を検討したところCiaH(Spy1236)の関与が示唆された。さらにこのCiaHの酸化ストレスに対する関与も明らかとなった。また酸に関連してバイオフィルム産生に関与すると考えられるある一つの二成分制御センサーの関与を示唆するデータも得つつある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初実施計画した劇症型、咽頭炎由来A群レンサ球菌の二成分制御因子をコードする遺伝子の塩基配列の比較の実験から全く意図しない新たな知見(新奇の二成分制御系欠損株の出現)を得ることができ、研究を発展することができた。
臨床分離株のセンサー蛋白質の解析から、現在進行している株の進化の一端を明らかにできた。加えて従来、動物実験や、試験管内で示唆されていたCovSセンサー蛋白質の実際の人体における病原性への関与を強く示唆する知見を得ることができた。
昨年度までに明らかにした一つのpH関連二成分制御センサー蛋白質Spy1622の関与に加え、新たな環境下での別の二成分制御因子Spy1236の関与も明らかにし、この二成分制御因子の別の環境ストレスにおける役割も明らかにすることができた。酸に関係して菌の生存のみならず、その環境下で蛋白質発現に関与する可能性のあるセンサー蛋白質の存在を示唆するデータも得ている。
一方、計画したSpy1622,Spy1236等のダブルノックアウトの樹立や、それらを用いた解析が予定より遅れている。

今後の研究の推進方策

24,25年度解析した見出した結果をさらに検証するとともに、以下の研究を実施する。
①二成分制御因子欠損株のさらなる解析―これらの株において見出された外来遺伝子取り込み効率が高いことを勘案し、ゲノム解析をもとにした新奇の病原因子の探索を行う。
②pH関連ダブルノックアウト株の樹立と解析―25年度は樹立が叶わなかったSpy1622, Spy1236のダブルノックアウトの樹立を目指し、種々の環境ストレス条件下での役割を検討していく。さらにこれまで樹立に成功しているダブルノックアウト株を用いた酸に対する影響、蛋白質発現の解析を行っていく。
③アミノ酸変異センサー蛋白質導入の野生株に及ぼす影響の解析―25年度の研究が進まなかった以下の研究を押し進める。正常と考えられるアミノ酸配列を有する野生株に、アミノ酸変異を有するセンサー蛋白質を導入し、異なる2種類のセンサー蛋白質存在下での野生株のpHに対する反応性の影響を検討する。

次年度の研究費の使用計画

25年度の研究計画にあった酸のセンスに関係する二成分制御系センサー蛋白質のダブルノックアウト株樹立が遅れ、そのため解析の検討が遅れたため、繰越金が生じた。
繰越金と26年度の研究費を使用して、ダブルノックアウト株の性状の解析に使用する予定である。さらに二成分制御因子の欠損が見出された株のゲノムを検討し、外来から獲得したことが示唆される病原因子の解析も合わせて実施予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Relevance of the two-component sensor protein CiaH to acid and oxidative stress responses in Streptococcus pyogenes2014

    • 著者名/発表者名
      Tatsuno I, Isaka M, Okada R, Zhang Y, Hasegawa T
    • 雑誌名

      BMC Res Notes

      巻: 7 ページ: 189

    • DOI

      10.1186/1756-0500-7-189

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Simultaneous isolation of emm89-type Streptococcus pyogenes strains with a wild-type or mutated covS gene from a single streptococcal toxic shock syndrome patient2014

    • 著者名/発表者名
      Masuno K, Okada R, Zhang Y, Isaka M, Tatsuno I, Shibata S, Hasegawa T
    • 雑誌名

      J. Med. Microbiol

      巻: 63 ページ: 504-507

    • DOI

      10.1099/jmm.0.070300-0

    • 査読あり
  • [学会発表] 二成分制御因子によるA群連鎖球菌のバイオフィルム形成機構の解析2014

    • 著者名/発表者名
      井坂雅徳、立野一郎、前山順一、長谷川忠男
    • 学会等名
      第87回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      東京 タワーホール船堀
    • 年月日
      20140327-20140328
  • [学会発表] 近年出現した新規A群レンサ球菌の特性に関する研究

    • 著者名/発表者名
      岡田涼、畑七奈子、脇本幸夫、長谷川忠男
    • 学会等名
      第25回日本臨床微生物学会総会
    • 発表場所
      名古屋 名古屋国際会議場
  • [学会発表] 近年出現した新規A群レンサ球菌の特性に関する研究

    • 著者名/発表者名
      岡田涼、松本昌門、張顔、松井秀之、井坂雅徳、立野一郎、長谷川忠男
    • 学会等名
      第50回日本細菌学会中部支部総会
    • 発表場所
      蒲郡 ホテル竹島

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公開日: 2015-05-28  

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