研究課題/領域番号 |
24590533
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研究機関 | 日本薬科大学 |
研究代表者 |
山岸 純一 日本薬科大学, 薬学部, 教授 (00589559)
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研究分担者 |
山田 作夫 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (00122458)
賀来 満夫 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40224357)
川井 眞好 姫路獨協大学, 薬学部, 准教授 (40533922)
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キーワード | 耐性機構 / キノロン薬 / アシネトバクター属 |
研究概要 |
本研究は多剤耐性菌に有効な抗菌薬の新規標的分子を見つけることを目指し、臨床現場で注目されているアシネトバクター属のキノロン薬耐性機構について分子遺伝学的な観点から解析を進めている。 ①キノロン耐性菌出現頻度の解析⇒アシネトバクター バウマニのレボフロキサシン(LVFX)耐性菌の出現頻度についてMPCを指標にして調べたところ、耐性獲得順位は緑膿菌>黄色ブドウ球菌>アシネトバクター バウマニ>大腸菌となり、アシネトバクター バウマニは特に耐性を獲得しやすいという傾向は認められなかった。 ②実験室内自然耐性変異キノロン耐性アシネトバクターの耐性機構の解析⇒平成24年度に見出したLVFXやシプロフロキサシンの様なニューキノロン薬(NQ)耐性かつナリジクス酸やオキソリン酸の様なオールドキノロン薬(OQ)超感受性を示すユニークな耐性菌について、キノロン標的酵素の変異を調べた。DNA gyrase GyrAの81番目のグリシンがアスパラギン酸に変化していた。その他の標的酵素認であるDNA topoisomeraseIVに変異が認められなかったことから、DNA gyrase GyrAのG81D変異がNQ耐性OQ感受性の表現型を惹起している可能性が示唆された。更に、このユニークな変異株を用いて、キノロン高度耐性菌を分離したところ、従来より知られていない新しい耐性機構を持つ変異株を見つけることができた。 ③臨床分離キノロン耐性アシネトバクターの耐性機構の解析⇒臨床分離株(約80株)について、プラスミド性キノロン耐性遺伝子(PMQR)の解析を行ったが、PMQRは検出できなかった。また、新規伝達性キノロン耐性プラスミドを接合伝達実験により検討したが、プラスミドは認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主目的は、キノロン耐性アシネトバクターの新規耐性機構を明らかにし、抗菌ターゲットとしての可能性を探ることにある。平成25年度の成果として、ニューキノロンに耐性かつオールドキノロンに超感受性を示す変異株を用いて、更にキノロン高度耐性株を分離したところ、標的酵素の変異や排出ポンプの亢進などの従来より知られているキノロン耐性機構とは異なる新しい耐性機構を有する変異株を見つけることができた。この新しいキノロン耐性機構を詳細に解析することにより、新規抗菌ターゲットを見つけることに繋がると思われる。したがって、「研究の目的」の達成を目指し、予定通り着実に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
A) 実験室内分離キノロン耐性アシネトバクターの耐性機構の解析⇒新規キノロン耐性機構を有するキノロン高度耐性変異株の詳細な耐性機構の解析に注力する。 A-1) 既知キノロン標的酵素であるDNA gyraseやDNA topoisomeraseIVをコードする全遺伝子配列を決定する。 A-2) 変異株の薬剤排出ポンプの発現量をRT-PCRによりmRNAレベルで解析する。 A-3) 変異株の全たんぱく質を二次元電気泳動法により解析する。 B) 臨床分離キノロン耐性アシネトバクターの耐性機構の解析⇒上記A)項目の新規耐性機構が臨床より分離したキノロン耐性菌で認められるのかについて検討する。 以上の方策により、新規キノロン耐性機構の実態を明らかにできるものと考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額328,187円のうち、228,187円(山岸)については、研究成果を国際学会で発表する予定でしたが諸事情により出張を中止したためです。残り100,000円(姫路獨協大・川井)は、研究の進展に伴い役割分担を変更したため、平成25年度は文献調査を中心としたためです。 228,187円(山岸)は、研究成果を公表するため、学会等の旅費として使用する予定です。 100,000円(川井)は、変更した研究項目について実験を行うため、物品費として使用する予定です。
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