研究課題/領域番号 |
24590536
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
菊池 賢 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60214748)
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キーワード | histone-like protein / 原発性胆汁性肝硬変 / gp210 / molecular mimic / ELISA / S. anginosus group / S. intermedius |
研究概要 |
原発性胆汁性肝硬変 (PBC)は主に中年以降の女性に発症する肝臓の葉間胆管周囲の慢性非化膿性炎症を主体とする原因不明の自己免疫疾患である。これまでに我々はPBCの自己抗原のmolecular mimicとして、Streptococcus intermedius (SI) のhistone-like protein (HLP) が強く疑われることを示してきた。 昨年度、PBC患者、他の自己免疫疾患患者、健常者の歯周病部位におけるSIを含むS. anginosus group (SAG) 株の分布を調べた所、PBC患者で特にSI保有率が高い訳ではなく、かつ、得られたSIにPBC患者特有のクローンは存在しなかった。今回は、SIに加え、得られた他のSAG菌株のHLPの菌種、由来での遺伝背景、産生性の違い等があるか、検討した。PBC患者5名、他の自己免疫疾患患者15名、他の疾患のない対照者22名から得られたSAGはS. anginosus (SA) 22株、S. constellatus (SC) 18株、SI 16株の計56株であった。これらに加え、深部膿瘍などの感染症由来株90株(各菌種30株)でhlp配列を比較すると、明瞭に3菌種にクラスター分けされた。SI株のin vitroにおけるHLPの産生量をELISA法で比較すると、PBC患者由来株では明らかに感染症由来株など他の株よりHLP産生量が高く、HLP産生の違いがPBC発症、進展に寄与している可能性が明らかになった。 今回の検討で、HLPの産生量がPBC由来株で高く、感染症由来株で低いことから、PBC患者の慢性炎症環境下ではHLP産生が惹起されており、そのことがPB発症、病態進行に寄与している可能性が考えられた。このことから、PBC患者の歯周病治療により、PBC病態進行をコントロールできるのではないかと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、ゲノムの決まっていないS. anginosus, S. constellatusのdraft sequenceを終了、gap&close, アノテーション作業を行っている。この情報を持ちいて、S. anginosus group全体の中での感染症由来株、自己免疫疾患患者菌叢由来株、健常者菌叢由来株の、次世代シーケンサーなどを用いた網羅的ゲノム比較が可能となり、病原性、抗原性などの差異を検討する体制が整った。
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今後の研究の推進方策 |
現在、行っているS. anginosus group 3菌種標準株の全ゲノム解析が終了すれば、これをベースに各病巣由来株、PBC由来株、健常者由来株との間の抗原性、病原因子の差異がゲノム比較手法を用いて、実施出来るようになる。特に、HLP産生能の違う株について、次世代シーケンサーを用いたresequenceを実施し、その差異を明らかにする。これまでに解析したPBC患者の数が少ない問題もあり、新たにPBC患者の歯周病部位の菌叢解析をメタゲノム手法を取り入れて、実施することも念頭に置いている。また、PBC患者の歯周病治療により、PBC自体の好転が得られるかどうかを、菌叢の変化を解析しながら、解明していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ゲノム解析にかかった費用が丁度、210万円であり、3100円の残金が生じたが、 必要な試薬等はこの金額では調達出来ず、次年度に繰り越して注文することとした。 最終年度に行う、次世代シーケンサー解析用試薬、や培地、ELISA Kitなどの購入に当てる予定である。
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