研究実績の概要 |
抗真菌薬の多くはステロール合成阻害剤であるが、真菌の中には宿主からステロールを取り込み生育に利用するものがある。そのため、ステロール取り込みは真菌の感染成立や薬剤耐性獲得と関わりが深い。本研究は、カンジダ・グラブラータを用い、真菌のステロール取り込み機構の全容と生理的意義を明らかにすることを目的とする。 本年度は、ステロール取り込みに必須であるマンノプロテインTIR3の発現が、ステロールトランスポータAUS1と同様に転写因子UPC2A、UPC2Bに制御されていること、ステロール取り込みが起こるには、AUS1とTIR3の発現だけでは不十分であることを明らかにした論文をcorresponding authorとして発表した(Biochim Biophys Acta 1851:141-51, 2015)。また、ステロール取り込みの更なる解明を行うため、ステロール合成遺伝子欠損株が変異することでステロール要求生株として好気条件で生育できる株(これらは培養条件に関わらず常にステロール取り込む)を取得し、マイクロアレイ解析からステロール取り込みに関連する因子の候補を同定し、日本薬学会第135年会で発表した。 Biochim Biophys Actaに投稿した論文が、Global Medical Discovery(ISSN 1929-8536)でKey Scientific Articlesとして取り上げられたように(https://globalmedicaldiscovery.com/key-scientific-articles/the-mannoprotein-tir3-cagl0c03872g-is-required-for-sterol-uptake-in-candida-glabrata/)、我々の研究成果は、ステロールの取り込み機構の詳細な解明に大きく貢献するものである。
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