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2013 年度 実施状況報告書

比較ゲノム解析を基盤にした緑膿菌の内因性血液感染メカニズムの解析

研究課題

研究課題/領域番号 24590541
研究機関香川県立保健医療大学

研究代表者

奥田 潤  香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (90334276)

研究分担者 後藤 直正  京都薬科大学, 薬学部, 教授 (30121560)
皆川 周  京都薬科大学, 薬学部, 助教 (50445962)
キーワード緑膿菌 / 内因性血液感染 / III型エフェクター / ExoS / 宿主因子KIF7 / 細胞傷害機構
研究概要

緑膿菌は免疫力の低下した患者に対して呼吸器感染症や敗血症を引き起こす。本菌の病原因子の一つとして、III型エフェクター ExoS が同定されている。ExoS は真核細胞内で宿主因子と結合することによって細胞死を誘導する。ExoS に結合する宿主因子としてはこれまでに 14-3-3 やFXYD3などが報告されているが、同定されている宿主因子との結合では ExoS の細胞内での作用について説明できない点も多い。そこでyeast two-hybrid system を用いてExoS と相互作用する新規宿主因子の探索を行なった。完全長の ExoSは酵母を死滅させたが、ExoSDC2 は死滅させなかった。そこで、ExoSDC2 を発現するプラスミドを用いて yeast two-hybrid screeningを行なった結果、119個の陽性クローンが得られた。さらに、ExoS と宿主因子の精製タンパク質を用いて pull-down assay によって結合確認を行なった結果、ExoS と相互作用する宿主因子として KIF7 が得られた。BEAS-2B細胞内でのKIF7 発現抑制およびExoSDC2発現は、アポトーシスではなく、ネクローシスを誘導した。
KIF7は細胞増殖などを制御する hedgehog 経路を調節することが知られている。hedgehog 経路は肺において、内皮細胞の傷害抑制や血管内皮バリアー機能の維持に寄与しており、さらに細菌の外膜構成成分の一種である LPS による傷害から毛細血管内皮細胞を保護することも報告されていることから、肺毛細血管内皮細胞に注入された ExoS は KIF7 と結合することで、hedgehog 経路の活性化を阻害し、それによってLPS による肺毛細血管内皮細胞傷害が促進され、炎症や浮腫といった肺傷害をもたらしている可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

緑膿菌による腸管経由トランスロケーションおよびそれに続く血液内での増殖メカニズムを解明し、解明したメカニズムを基に、緑膿菌による腸管経由内因性血液感染の予防法や治療法の考案につながる標的遺伝子や標的タンパク質を同定することを目的としている。これまでに、標的遺伝子としてIII型分泌機構のエフェクターExoS遺伝子を同定しているが、本年度の研究により、ExoSが新規の宿主因子 KIF7と宿主細胞内で結合することにより、宿主細胞の細胞死を誘導するメカニズムが明らかとなった。この結果は、緑膿菌による腸管経由トランスロケーションにおけるExoSの重要性をさらに示唆するものである。

今後の研究の推進方策

これまでに、腸管上皮細胞内に注入されたExoSがFXYD3と呼ばれる宿主因子と相互作用することにより腸管上皮細胞間のタイトジャンクションを破綻し、その結果、本菌が腸管から血液へトランスロケーションする可能性があること、さらに、宿主細胞内に注入されたExoSがKIF7と結合することにより腸管上皮細胞の傷害を誘導し、上皮細胞層によるバリア機能そのものを破綻する可能性があることを明らかにした。この研究成果に着目し、ExoSに結合するウサギポリクローナル抗体の作製を既に完了した。今後は作製した抗ExoS抗体の腸管上皮細胞内への送達により、ExoSのFXYD3やKIF7への結合を阻止し、結果として、本菌の腸管上皮細胞層透過活性が減弱化するかどうかの評価を行う。

次年度の研究費の使用計画

今年度に発注していた試薬の内、海外メーカーの型番変更に伴う在庫の欠品で、今年度中に購入することが不可能となるものがあったため。
昨年度に購入できなかった試薬の購入にあてる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] ExoS of Pseudomonas aeruginosa binds to a human KIF7 to induce cytotoxicity in cultured human bronchial epithelial cells.2014

    • 著者名/発表者名
      Okuda, J, Hanabusa A, Gotoh N
    • 雑誌名

      J. Infect. Chemother.

      巻: 20 ページ: 121-127

    • DOI

      10.1016/j.jiac.2013.09.001

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Type IV pilus protein PilA of Pseudomonas aeruginosa modulates calcium signaling through binding the calcium-modulating cyclophilin ligand.2013

    • 著者名/発表者名
      Okuda, J, Hayashi N, Arakawa M, Minagawa S, Gotoh N
    • 雑誌名

      J. Infect. Chemother.

      巻: 19 ページ: 653-664

    • DOI

      10.1007/s10156-012-0536-y

    • 査読あり
  • [学会発表] ExoS of Pseudomonas aeruginosa binds to a human KIF7 to induce cytotoxicity in BEAS-2B cells2014

    • 著者名/発表者名
      奥田潤,後藤直正
    • 学会等名
      第87回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      タワーホール船堀(東京)
    • 年月日
      20140326-20140328
  • [学会発表] タイプIIIエフェクターExoS を介した緑膿菌のBEAS-2B肺上皮細胞に対する細胞死誘導機構の解析2013

    • 著者名/発表者名
      奥田潤,後藤直正
    • 学会等名
      第66 回日本細菌学会中国・四国支部総会
    • 発表場所
      広島国際大学(広島)
    • 年月日
      20131012-20131013

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公開日: 2015-05-28  

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